埼玉県入間市の木造新築住宅/リフォームは一級建築士事務所/独楽蔵へ

【暮らしが息づくとき ― 完成から数ヶ月経過した減築住宅に訪問】

リビングの飾り床には、タカノハススキ(矢羽ススキ)が静かに生けられていました。残暑を感じさせる日々の中、その姿には確かな季節の移ろいが宿っています。

この日訪ねたのは、数ヶ月前にお引き渡しをした住宅。かつて2階建てであった住まいを、思い切って平屋へと減築した建物です。

新築や増築と異なり、「減築」という選択は、単にボリュームを小さくする工事ではありません。住まい手が、これからの暮らしのあり方を見据え、必要なものとそうでないものを見極めた結果として導き出される空間の姿です。家族構成や生活スタイルに合わせて住まいを更新していく、きわめて主体的で成熟した住まい方だと感じます。

竣工時に記録として撮影した空っぽの室内は、建築としての純粋な美しさを示す一方で、どこか無機質な静けさも伴っていました。けれども今は、アンティークのダイニングテーブルに、ハンス J. ウェグナーのYチェア。リビングには深く腰を預けられるイージーチェア。お施主さまが自身の生活のために選んだ家具が置かれ、空間には確かな暮らしの温度が宿っています。

数ヶ月の時間を経て、大切なものや好みのものが自らの居場所を見つけ、建築に寄り添うように佇んでいる。その様子を目の当たりにすると、設計者として「減築」という決断が、暮らしに新しい質をもたらしていることを実感します。

床の杉板もすでに日に焼けはじめ、これから心地よい経年変化を刻んでいく気配を見せていました。小さく整えられた住まいが、時間とともにより豊かな場へと育っていくことを願っています。

完成時のこの家の様子はこちら↓
WORKS:50年の記憶を紡ぎ直す──実家を平屋に“減築”するという選択

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