【設計事務所 独楽蔵の家に住むひとの日常】原っぱは野の草花の宝庫
【設計事務所 独楽蔵の家に住むひとの日常】原っぱは野の草花の宝庫
幼い頃住んでいた家の近くに、大きな社宅があって、その敷地内に広々とした原っぱがあった。のどかな時代だったのだろう。整地もされず、駐車場にもならず、遊具も何もない、まぎれもなく純度の高い"原っぱ"だった。その原っぱは、社宅の住人でなくても、自由に出入りができた。だからいつも誰かが、原っぱにやって来る。あちらで野球をする子がいれば、こちらでは親子が縄飛びの練習をしている。賑やかに走り回る鬼ごっこのチームもいた。いくつかの遊びが同時進行しても、なんら問題ないぐらいの、懐の深い遊び場だった。
【設計事務所 独楽蔵の家に住むひとの日常】アンティークドアをリメイクした玄関の姿見
【設計事務所 独楽蔵の家に住むひとの日常】アンティークドアをリメイクした玄関の姿見
子どもたちも小学生になり、僅かではあるが、鏡に突撃しない程度の落ち着きが備わった。今こそ、大きな鏡を我が家へ誘う時ではないか。子どもたちには、外に出る前に、鏡の前で自分と向き合い、身だしなみも、心も清らかに整える習慣を身につけていってほしい。もちろん自分自身も、そういう人でありたい。しっかりと全身が映り、玄関の空間にも馴染むような、良い鏡が欲しい。
【設計事務所 独楽蔵の家に住むひとの日常】おままごとと木造の家の記憶
【設計事務所 独楽蔵の家に住むひとの日常】おままごとと木造の家の記憶
子どもの頃、近所に立派な一軒家が建つ予定だったのだけれど、柱、梁、屋根といった骨組み部分を完成させる「棟上げ(むねあげ)」までしたところで、施主と工務店が喧嘩別れをしたとかで、工事は止まり、しばらくそのまま放置されていた。大人たちは「早く解決して、壊すなりなんなりして欲しいわ」なんてぼやいていたが、子どもたちは大喜びだった。この骨組みの家は、間違いなく「おままごと」に使えるからだ。
【設計事務所 独楽蔵の家に住むひとの日常】「牧野植物園」の庭 ギンリョウソウ
【設計事務所 独楽蔵の家に住むひとの日常】「牧野植物園」の庭 ギンリョウソウ
「ギンリョウソウは、もうご覧になりましたか」そう話しかけられたのは、もう何年も前のこと。高知にある「牧野植物園」を訪れた時だった。植物が好きで、好きで、大好きでたまらなかった植物分類学の父、牧野富太郎博士の世界を具現化したような、その自由な空間。五台山(ごだいさん)という豊かな自然環境をそのまま活かした園地には、牧野博士ゆかりの3000種類以上の植物が大切に育まれていた。
【設計事務所 独楽蔵がデザインした家に住むひとの日常】薪棚で冬眠していたヤモリ
【設計事務所 独楽蔵がデザインした家に住むひとの日常】薪棚で冬眠していたヤモリ
ある朝、最後の薪を手に取った時、空っぽになった薪置き場を見て、あ、と思わず声をあげた。ヤモリだ。淡い粉をふりかけたような柔らかく薄い皮膚は、白く変色して、微動だにしない。ぼんやりとした斑紋が散らばる小さな体は、警戒心もなく、無防備に投げ出され、前足を木っ端に引っ掛けていた。少々、寝相が悪い。
【設計事務所 独楽蔵の家に住むひとの日常】無垢材の床のザラザラ問題
【設計事務所 独楽蔵の家に住むひとの日常】無垢材の床のザラザラ問題
ざらざらするのである。床が、いつもざらざらしているのである。毎日掃除機もかけるし、白木屋傳兵衛の江戸箒(えどほうき)は、こだわって大小揃えた。年に何回かは、アウロという無垢材用のワックスで雑巾がけもする。でも、どうにもこうにも、ざらざらするのだ。
【設計事務所 独楽蔵がデザインした家に住むひとの日常】暮らしと行事(節分)
【設計事務所 独楽蔵がデザインした家に住むひとの日常】暮らしと行事(節分)
今年も、節分がやってきた。柊鰯も飾らず、恵方巻きもなく、それらしいことはしないけれど、豆まきだけは、家族揃って行うことにしている。おもむろにガラス戸を開け、深呼吸。外の庭に向かって、夜空に向かって、思いきり豆を投げ放つ。そして、大声で叫ぶ。私が。私だけが。
【設計事務所 独楽蔵の家に住むひとの日常】玄関を季節の花で彩る
【設計事務所 独楽蔵の家に住むひとの日常】玄関を季節の花で彩る
さっそく、玄関に飾ってみる。香水、洗剤、消臭剤。何事も香りが強い現代において、梅の香りは、驚くほど、微かで、儚い。蕾も、咲きかけも、パッと開いた姿も、何処もかしこも愛らしい花に、うっかり触れて落としてしまわぬよう、そっと頬を寄せてみると、ため息ほどの甘い香りをくれた。昔も今も、こんな香りに気づける繊細さがあってこそ、恋に落ちも、落としも、できるのだろう。玄関がそこはかとなく、やわらかい空気に包まれる。家族は、この香りに気づくだろうか。
【埼玉の設計事務所がつくる新築木造住宅】犬(ペット)目線の暮らし:朝の風景(埼玉県日高市)
【埼玉の設計事務所がつくる新築木造住宅】犬(ペット)目線の暮らし:朝の風景
私は、自分のお部屋で寝たり、陽あたりの良い窓辺でまどろんだり、薪ストーブをチェックしたりする。変な人がいないか、外を見張っていることもある。家のなかには、お気に入りの場所がたくさんあって、季節の移り変わりや、その日の気分で、居場所を変えながら、自分時間を楽しむ。
【設計事務所がつくった住宅に暮らす生活者目線 】玄関土間の使い勝手(埼玉県日高市)
【設計事務所がつくった住宅に暮らす生活者目線 】玄関土間の使い勝手
玄関を整える。とても清々しくて、気持ちの良い作業だ。我が家の玄関は、いわゆる昔の家でいう土間づくりで、上質な迎賓の趣というより、外と内をゆるやかに繋ぐ、動きのある空間だ。家族と犬が日々、出入りするので、はき掃除がしやすく、汚れが目立たない、炭を練り込んだモルタル仕上げの床が効いてくる。
【設計事務所がつくった住宅に暮らす生活者目線 】飼い犬との散歩&近所付き合い(埼玉県日高市)
【設計事務所がつくった住宅に暮らす生活者目線 】飼い犬との散歩&近所付き合い(埼玉)
自分の思い込みなんてちっぽけで、えいっと外に飛び出てみると、自分ではない誰かや、何かが、知らない世界を教えてくれる。金柑は美味しいよ、とか。あれはカワセミの鳴き声だよ、とか。この雨は、じきに止むよ、とか。なにも地の果てに旅しなくたって、日々の暮らしは、旅のように、おもしろいものだ。
【設計事務所がつくった住宅に暮らす生活者目線 】 田舎暮らしの理想と現実(埼玉県日高市)
【設計事務所がつくった住宅に暮らす生活者目線 】 田舎暮らしの理想と現実
住めば都なんていう言葉は、くそくらえで、10年以上住んでも、ここは確実に不便だし、決して「都」ではない。巷の住みたい街ランキングには、この先も入ることはないだろう。けれど、自然に囲まれる有機な暮らしに憧れる夫に、間違いなく、騙されるかたちではじまったこの暮らしが、今は結構楽しい。山の色や川の澄み具合。風の通り道が、どの辺にあるか、肌で感じられるようになった。薪ストーブの薪も、これは長く燃える薪。こっちは着火に向いてる、と感覚が掴めてきた。