埼玉県日高市の新築木造住宅は一級建築士事務所/独楽蔵へ

【設計事務所 独楽蔵の家に住むひとの日常】春の音 薪ストーブの薪集め

【暮らしnote No.15】
writing:maiko izumi

埼玉県入間市にアトリエを構える建築設計事務所 独楽蔵 KOMAGURAが設計した新築木造住宅に住む生活者(maiko izumi)から見える日々の暮らし

春は、にぎやかな音に満ち溢れている。日に日に近づく春の足音も、みんなを呼ぶ鳥の囀りも、緩みはじめた川のせせらぎも。

それからもうひとつ、私にとって忘れられない「春の音」がある。

家の近くに、薪ストーブに使えそうな枝木を、ご厚意で分けてくれる樹木の伐採会社がある。我が家に軽トラはないので、私は軽自動車で、薪を頂きに行く。クルマのバックシートをフラットにして、一面にブルーシートを敷き、そこに積めるだけの薪を積んで帰る。薪活に最適な季節は冬で、他の季節と比べて水分が少なく、カラリとした木が多いからだ。

冬のうちに何度か足を運び、来年用の薪を仕込んでおく。その日は、薪活のベストシーズンからは少し時期が遅れ、啓蟄(けいちつ)を過ぎた頃。あたりは、柔らかな春の空気に満ちていた。現場には、桜やコナラ、欅といったどっしりと重厚感のある丸太が多くあって、これはいい薪になりそうだと、すっかり嬉しくなる。帰りは、山のように積んだ枝木が崩れぬよう、ゆっくり運転する。

その時だ。後ろの座席から、聴いたことのない音が聞こえてきたのは。ちりちり、さわさわ、ちりちり、さわさわ。

ひとりなのに、ひとりではない、ただならぬ気配。なんだろう。ラジオを消して、耳を澄ます。

そこで私は、ようやく気づいた。

木は、実にさまざまな生き物たちの巨大な住処(すみか)なのだと。切り倒された枝木の中には、数えきれないほどの生き物たち(ゲジもニョロもゴキもブンブンも幼も菌も卵も)が眠っていてる。

季節の移り変わりを細やかに紐解く七十二候のひとつに「蟄虫啓戸(すごもりのむし とをひらく)」という候がある。冬ごもりをしていた生き物たちが、春の陽気に誘われて、地上へ這い出してくることなのだけれど、まさにそれが、私のクルマのなかで起きているのだ。蠢く(うごめく)ようなその音は、もはや囁きを超えて、想像以上に賑やかな合唱となる。

私は、数えきれないほどの命の大合唱を背中に感じながら、春のエキサイティングドライブを満喫した。なんとか無事家路に辿り着いたが、エンジンを切ってもなお車内に響きわたる、ちりちり、さわさわ。こうして私の記憶に、新たな「春の音」が加わった。

また、今年も春がやってきた。軽やかで、眩しい季節のはじまりだけれど、時には、冬眠からパッと目覚めることができなかったり、新しい水になかなか馴れなかったり。柔らかな羽が破れてしまったり。うまくいかないこともあるだろう。

でも、春の虫虫と書いて「蠢く(うごめく)」という言葉は、〝モゾモゾ動く“という意味なのだから、軽やかにスタートダッシュが切れなくて当然なのだ。 ゆっくりあわてず、モゾモゾと。体と心を、じんわりあたためながら。

それぞれの春が、花ひらくまで。

建築設計事務所 独楽蔵(こまぐら)では、新築のペットと暮らす木造住宅はもちろん、庭づくりや古民家や中古住宅のリフォーム、リノベーション、現況調査や耐震補強などのご相談もお受けしています。今、お住まいの住宅で、気になっている部分、ご不明な点や疑問点などあれば、電話やメールなどでお気軽にご相談下さい。

建築設計事務所 独楽蔵(こまぐら) 担当:長崎まで
04-2964-1296 komagura@komagura.jp

この住宅の完成時の様子はこちら↓
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