【『海岸線の歴史』 松本健一】海から日本を考えてみる

【『海岸線の歴史』 松本健一】海から日本を考えてみる

遠浅の海や、砂浜の風景。白い砂と青い松の「白砂青松」の世界。

唱歌でよく歌われていた「我は海の子、白波の〜」などが表すように、昔の日本は、海や海辺が生活や文化の中心でした。

遙か昔、海を渡って日本の「海やまのあいだ」の狭い平地の海岸沿いに住んだ原日本人にとって、海の向こうは自分たちの祖先がいた観念の場所であって、それゆえに、神と人間が接触する神聖なる場所であり、そして、死んだらまた海の彼方に還っていく、という祈りの場所でもありました。

つまり、海岸は陸と海が接触する場であると同時に、神と人間が接触する場でもあり、また生者と死者がそこで接触し、そしてまた相別れていく場所でもあります。

物理的に見ても、日本の海岸線の長さは、アメリカの1.5倍、中国の2倍。想像以上に海に接している部分が長い、世界有数の国です。

しかしながら、古代から現代にかけて、その海岸線がどのように変化してきたのかという研究はあまりされてないということです・・・。

近年は、船の大型化や産業、防災の観点から、より深くて大きい港や防波堤などに囲まれ、海岸線も以前とは様変わりしました。以前の日本人は、海辺に住み、労働し、遊び、祈るということが日常でしたが、現代は日本人の生活や意識が海からどんどん離れてしまっています。

日本は「海洋国家」や「海洋立国」を目指す前に、「海岸線(渚:なぎさ・みぎわ 海辺など)」という切り口で、もう一度日本を考えてみる必要があると感じました。

本書は歴史や民俗学、宗教、経済、海上交通、防災などいろいろな側面から、多角的に語られていて、とても腑に落ちて納得・・・・。これからは、このように分野や専門領域を超えた分析や研究が大事になってくるような気がします。

そして、吉田篤弘さんのこの本の装丁もとってもかっこいい!


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