デザインにはお客さんの要望と具体的な敷地が必要なんです
お客さんや友人、知人など、お会いした方々から「自分が思い通りの建物をつくることが出来ていい仕事ですね。」というようなことを、よくいわれます。確かにいい仕事だなぁ〜と思っていますので、決して間違っているわけではありませんが、家を設計したり、デザインしているときは、自分の好きなようにデザインをしているという感覚は、あまりありません。
「ちょっと家のプランを考えてみてよ」と頼まれることもありますが、プランはお客様の要望や予算、具体的な敷地条件が揃って初めて考えられるものです。同じ形の敷地でも、方位や接道、高低差など、周囲の環境が異なれば、全く違った家になります。家族構成が同じでも、お客様の考え方やライフスタイルによって、家の形は変わってきます。
家づくりには、「家族のこと」「お客様のご要望」「実際に家が建つ敷地」など、多くの要素が関わってきます。さらに、予算、建築法規、耐震性、耐久性など、様々な側面を考慮しながら進めていきます。それらをすべて整理して、バランスよくまとめながら、自然に導き出されるようなかたちを探していくのが、設計という仕事だと思っています。

お客さんが選んだタイルでキッチンを考えていく
中でも、いちばん大切にしているのは、「そのご家族が、家にどんな思いを託して、どんな暮らしをしたいと考えているのか」ということ。
その“芯になる思い”をしっかりと受けとめて、ぶれないように進めていくと、最後にはきっと、そのご家族にとって「本当にいい家」になる。いい家とは、誰かが決めた“正解”ではなくて、そこに暮らす人たちが、日々を気持ちよく過ごせる場所のことだと思うのです。
そうやってできた家は、住む人も、つくる人たちも、 みんながうれしくなります。そして、そのうれしさは、きっと家といっしょに長く残っていくのだと思います。