【昭和30年代の暮らしから考える視線の高さ】松戸市立博物館「常盤平団地」

【昭和30年代の暮らしから考える視線の高さ】松戸市立博物館「常盤平団地」

写真は千葉県松戸市にある「常盤平団地」。1960(昭和35)年に、東京近郊の住宅不足を緩和するため、都市住宅整備公団によって世帯数5000戸ほどの住居(170棟)と、ショッピングセンター・集会所・病院・小学校などの施設を有する街が建設されたそうです。

「50万坪の新都市 常盤平誕生」と名付けられた当時のパンフレットには、ガス・電気・下水道などの施設が整った「田園に生まれた衛星住宅都市TOKIWADAIRA NEW TOWN」と宣伝されていたそうで、団地が当時のモダン住宅の最先端で、憧れのライフスタイルだったことが伺えます。小津安二郎監督の「秋刀魚の味」でも、主人公の長男夫婦が団地に住んでいる姿が実家の風景と対照的な空間として写されています。現在で、考えればタワーマンションみたいな感じでしょうか・・・。

実は、この建物は実物ではなくで、松戸市立博物館に再現された2DKの実物大モデルなんです。住人の人物設定も細かく設定されていて昭和30年代の暮らしが再現されています。世代的に実際に昭和30年代を体験していないのですが、かなりリアルに感じます。(展示設計は乃村工藝社さん)

室内を小津安二郎調で撮影してみようと思って、「ロー・ポジション(ロー・ポジ)」でカメラを構えてみましたが、やっぱり引きがないので難しいですね。小津映像の特徴の一つ「ロー・ポジション」の起源は諸説あるようですが、床づかいをする日本の空間と親和性が高いのは、疑いのないトコロです。

ちょうど、昭和30年代からの団地の暮らしは、ダイニングデーブルやソファーなど椅子使いの生活と、今までの茶の間の床使い(たたみの生活)がミックスし始めた時代だとも言えます。人々の生活の視線も「ロー・ポジション(ロー・ポジ)」から、40cm程度上昇して椅子の目線になっていきます。

最近は畳のスペースも少なくなりつつありますが、日本人の空間認知や嗜好性が、徐々に変わっていくのかどうかも興味深いトコロです。小津映画や寅さんを見て、なんとなく落ち着いたりしっくりする気持ちになるのは、私がおじさんだからでしょうか・・・。

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