無垢の木に張り替えられた床と壁、子どもたちがやっと、くぐれそうな小さな引き戸の出入り口。指先にゴツゴツした感触を残すエゴノキの枝を取っ手にしたロッカー。絵本の表紙が見えるように工夫された本棚。5枚1組で3段に構成された段違い畳床や、円弧を描きながらせり上がる木製スタジアム。そして、床からニョッキリと伸びた太い幹。掴む、握る、登る、飛び降りる、座る、潜む・・・、といった行動を通じて、子どもたちが思い切り遊ぶ様子が目に浮かびます。
絵本の表紙がちゃんと見える本立て。エゴノキを引き手にしたロッカー。一つ一つ違った形で、触覚が触発される。
こどもたちがからだ全体で遊びたくなる「仕掛け」
子どもの『不思議』を育てるには、好奇心を持たせることと、多少のスリルと工夫。そして発見、意外性。こういう要素が必要だと思います。そういえば、昔の家には不思議さがありました。縁の下、廊下の暗闇、開かずの納戸、夜寝るときに見上げた天井の板の節・・・。子どもはそれだけで楽しくて怖くて、年を重ねるたびにその謎がひとつづつ解けていく。そういうわくわくドキドキが今の家の中からなくなっていきました。
子どもの有機性が大人にも心地いい空間を生み出す
愛嬌やユーモアなど、子どもの持つ有機性が大人にも心地いい空間を生み出してくれる
それから、子どもの感覚は大人とちょっと違っていて、小さな子どもが30cmくらいの高いトコロに登っても、大人が感じるより何倍も高く感じているはずです。小さなスケール感の可能性を考えながら、細かな仕掛けをつくっていくと、子どもは思いがけない使い方をします。そんな子どもの愛嬌やユーモアや温かみのある有機性は、きっと大人にも居心地のいい空間を生み出してくれるはずです。
子どもの心理をよく考えて計画する
子どもの心理をよく考えてみる
本棚にしても、普通、背表紙しか見えませんが、本をつくる側は表紙を一生懸命考えてつくっている。だから、表紙が見えるほうが本を探す魅力も増しますし、読んだ本をそこに戻しておけば、読んだときのイメージが風景の中でずっと記憶に残るのではないでしょうか。
もしかしたら、子どもが散らかすっていうのは、そのへんの心理が働くのかもしれません。選んだことが自分の分身に思えて、戻しちゃうのがおしかったり・・・。そういうものが蓄積して、いい思い出になっていくのではないかと思うのです。
引き戸を引くと建具同士が重なって、三角形に張った色フィルムが重なって色が変わる仕掛け。(色フィルムはまだ未施工)
小さな引き戸を組み込んだ引き戸。引き違い戸の中にさらに小さな引き戸があるよ。(安全性のため鍵付き)
丸太をよじ登らなければ、たどり着かない上の「たたみベンチ」と天井の低い下の「たたみベンチ」
幼稚園ミーティングルーム&露天風呂 増改築
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