埼玉県飯能市の新築木造のクリニック 設計デザイン

地域に開かれた広場としてのクリニック〜埼玉県飯能市八幡町の新築木造2階建て医療施設〜

埼玉西部に位置する飯能市のなかでも、古き良き歴史が刻まれてきた八幡町。約180年間7代にわたり、地域の方々の健康を見守り続けてきたのが「医療法人徳明会 小室クリニック」です。現在では外来はもちろんのこと、訪問診療・看護・リハビリテーション、訪問介護サービスまで、多様な医療・介護サービスを提供されています。今回は、地域の皆さんが住みなれた場所で、安心して最後まで過ごすことができる医療・介護システムの構築をめざして、築50年の鉄筋コンクリート3階建てから、新築木造2階へと建て替えるプロジェクトです。“あらゆる世代の方々が気楽にご相談できる、開かれた施設を作りたい”という院長先生の真摯な想いを反映させながら、プランを練り上げていきました。

目 次(クリックすると開きます)

医療の側面からコミュニティを創る〜クリニックを地域に開かれた新しい広場へ〜

「カフェのようなクリニックを…」これは、クリニックの建替えにあたって、院長の小室先生がご希望された新しい建物のイメージです。明るく洗練された空間にしたいという意味合いもありますが、その根本には、地域の皆さんや新しい患者さんが気軽に立ち寄ることができたり、志を同じくする医療関係者の方々が集まることのできる、地域に開かれた広場のような空間を作りたいという熱い想いが込められていました。

地域の方たちの健やかな日々を〜介護も含めた地域医療の拠点としての空間づくり〜

「小室クリニック」さんは、地域の医療機関、介護施設などと連携を持ちつつ、医療・介護サービスを提供する地域医療の重要な拠点になっています。患者さんやご家族の方々が気楽に、ご相談できる「開かれた施設」であると同時に、地域の皆さんが安心して、住みなれた場所で最後まで過ごすことができるように、医療・介護システムを支える空間として、建物を計画していきました。

森林都市“飯能”らしさを生かした、木造建築のクリニック

今回は、築50年の鉄筋コンクリート3階建ての病院から、木造2階建てのクリニックへの建て替え計画です。木造建築の持つやわらかな印象は、訪れる患者さんにとっても安心感を与えます。また、森林都市としての街づくりを推進する飯能市の地域性を生かした構造ともいえるでしょう。軒の低い木造2階建ては、昔ながらの建物が残る飯能の街並みによく馴染みます。その他、木造建築には地産地消、環境負荷の軽減、工期短縮、工費軽減、完成後の可変性など多くのメリットがあります。

サステナブルな街づくりにフィットする木造建築

これからの建築の未来や、サステナブルな街づくりという面から考えても、中高層の木造(耐火仕様)建築は、今後さらに増えていくと考えられます。しかし木造の建物を計画するにあたっては耐火性、耐震性、法律(建築基準法)、防音製などさまざまな問題があります。それらの課題をひとつひとつクリアしながら「外来」と「訪問医療・介護」という2つの事業のスペース配分をどのようにしていくか、検討を重ねていきました。

溢れる緑が街の雰囲気を変えていく〜大通りを彩る50mのグリーンベルト〜

通常、不特定多数の方々が利用する施設や店舗を設計する際、通りに面した前面には、出入り口や駐車スペースが作られます。しかし今回の計画では、飯能の大通りに面した幅約50mの道路境界の部分に、あえて緑の緑樹帯を設けました。これは「地域全体に開かれた新しい広場」としてのクリニックを具現化するためです。植栽のセレクトは、ガーデンデザイナーの有福創さんによるもの。1年を通して、いつもみずみずしい緑が楽しめるように、細やかな工夫がされています。クリニックを利用する方だけでなく、地域の人々にも長く愛される風景として育まれることをめざしています。

駐車スペースは、建物をくぐり抜けるように進入した奥に設けました。正面のエントランスには大きな庇がかかっていますので、クルマでの送迎や、救急車での搬送の際も、雨風を避けてスムーズにクリニックに入ることができます。

内からも外からも、緑を身近に感じることのできるデッキテラス

大通りに面した緑樹帯には、四季を楽しむことのできるさまざまな植物が植えられています。通りからはもちろんのこと、大通りと並行に配置したデッキテラスからも木々や花を楽しむことができます。

病院の待ち時間も楽しくなるように〜建物の中からも緑を楽しめるガーデンデザイン〜

建物の南側、デッキテラスに面した待合スペースは、連続する窓から通りの緑を楽しむことができます。西側の大きな円窓からは、薪ストーブ越しに、古くからあるご自宅の日本庭園を眺めることも。病院の待ち時間もリラックスできるようなアイディアを散りばめることで、精神的なケアにも繋げていきます。

ゆっくりと時が流れる贅沢なひとときを〜薪ストーブのあるクリニックの待合スペース〜

待合スペースの奥には薪ストーブを設置しました。これは、クライアントの小室先生のご要望です。冬の寒い日は、朝、先生自らストーブに火を付けられているそうです。炎のある場所に、自然と人は集い、会話が生まれたり、心がほどけていくような時間を過ごすことができます。暖房という機能的な面はもちろん、コミュニケーションツールとしての役割も果たしているのかもしれません。

患者さんの中には、ストーブの薪を差し入れに持ってきてくださる方もいらっしゃるとか。森林都市、飯能ならではのエピソードです。

対話の空間としての新しい広場

これからの地方創生において“対話が生まれる空間”づくりは欠かせない課題と言われています。かつての地域社会では、井戸端会議や組の寄り合い、さまざまな年中行事を通して、地域の人が世代を超えたコミュニティを形成していました。しかし現在は、そういった風習や行事も減り、さまざま世代の方々が、気づかないうちに社会と断絶されていたり、孤立していたりすることがあります。

そういった問題を解決していくために、今までは“対話の空間でなかった場所”を、新たなコミュニティ形成の空間として再構築していくことが大切なのだと思います。「小室クリニック」が取り組む新しい挑戦は、まさにそのひとつの答えになっているのではないでしょうか。

 

新しく生まれ変わった「小室クリニック」が、医療の側面から創る「地域の新しい広場」。この地域の方々の健康を見守りつつ、新たな対話を生む、かけがえのない空間になっていくことを願っています。

KOMUROの「K」を模った木製ドア

患者さんとスタッフの動線を分ける〜快適な空間で、より働きやすいクリニックへ〜

各診療室の間には、患者さんの通路とは別に、先生方や看護婦さんなどのスタッフがスムーズに行き来できるように、専用の通路が作ってあります。

西川材を使った診療室

雨や雪を気にせずにアクセスできるエントランスと車寄せ。大屋根をくぐり抜けると広い駐車スペースが現れます。

大通りに建つ建物として夜の風景も考える

クリニックは飯能の大通りに面していますので、診療が終了した夜の時間も、街の風景を彩ることができるように照明計画を考えています。行き来する人たちにとっても、ホッとできるお気に入りの風景になるようにデザインしました。

writing監修:maiko izumi

小室クリニックのイラスト計画案はこちら
その後の暮らし:【完成2年半後の庭】はこちら

独楽蔵 建築設計事務所 ホームページ TOP
WORKS TOP

関連リンク(クリックすると開きます)

関連記事:【ナツハゼの紅葉】 飯能の庭づくり
関連記事:【縦樋をデザインする】はこちら
関連記事:【閉店後のディスプレイ:NIGHT FLOWER】店舗設計デザイン
関連記事:【小室クリニック(飯能市)夏の庭】飯能市のクリニックデザイン 2016/07/04
関連記事:【立夏 蚯蚓出(みみずいずる)】クリニック(飯能市)の植栽計画 2016/05/13
関連記事:[木塀(築造約40年)と木塀(新規)のジョイント]飯能市の家づくり 2016/02/13
関連記事:【飯能市のクリニック 待合室:薪ストーブ大活躍!】 クリニック設計デザイン 2016/01/27
関連記事:【小室クリニックさんの内覧会がありました】飯能市 クリニック建築デザイン 2015/12/28
関連記事:【小室クリニックさん(埼玉県飯能市)の内覧会のお知らせ】クリニック建築デザイン 2015/12/17
関連記事:【大通りのグリーンベルト :植樹作業】クリニック設計デザイン(飯能市) 2015/12/15
関連記事:【フローリングの床に見えますが・・・】タイル張りの待合スペース クリニック設計 2015/12/10
関連記事:【建築完了検査&消防検査終了しました!】飯能市のクリニックデザイン 2015/12/08
関連記事:埼玉県飯能市「小室クリニック」の新築現場 『看板取り付け』 2015/11/04
関連記事:「飯能市 小室クリニック」の新築工事現場 屋根工事の様子 2015/10/30
関連記事:【長尺23m:一枚物のガルバニウム鋼板(平葺き)の屋根葺き】飯能市のクリニック新築工事 2015/09/16
関連記事:埼玉県飯能市で「小室クリニック」さんの上棟式がありました。2015/08/23
関連記事:【埼玉県飯能市でクリニック新築の地鎮祭がありました(解体工事の様子)】 2015/06/22