草履を履いた徒歩の旅のエッセイ

『樹木とその葉』若山牧水 (牧水を通してみる山河の風景)を読みました。

草履を履いた徒歩の旅のエッセイ

若山牧水が静岡県沼津市に転居していた大正10年から13年の間に綴った随筆です。本の冒頭の一首「山にあらず海にあらずただ谷の石のあひをゆく水かわが文章は」にあらわれているように、日常や、家族、友人のこと、お酒のこと、山河をめぐる旅の様子など、自由自在に書かれたエッセイです。愛する草履を履いて行く徒歩の旅。

予定のない出会いの旅

小淵沢から八ヶ岳の裾野の巡って、野辺山→松原湖、千曲川に沿って下り、御牧が原、そこから引き返して再び千曲川に沿ってその上流の水源地まで・・・。そしてその水源地を為す十文字峠を越えて、秩父に入り、秩父の影森駅から汽車で東京に出て沼津に帰宅。そのルートや距離が尋常じゃなくて、びっくりしますが、当の本人は、本の中で、「私は健脚家というではなく、いわゆる登山家や冒険家でもないので、あまり無理な旅はしたくない。出来るだけ自由に、気持ちよく、自分の好む山河の眺めに眺め入りたいためのみに、出かけていく。行く先々にどんな所に出会うかわからないので予定が立てられない」と言っています。

牧水の祖父は所沢市神米金(かめがね)の農家の出身

そのほかの旅も北関東や伊豆、中部地方など馴染みのある地名が登場しますので、牧水の目線で、いっしょに旅をしているような気持ちになって楽しいです。牧水の祖父は所沢市神米金(かめがね)の農家の出身。長崎でシーボルトに西洋医学を学び、宮崎で医院を開業したそうです。 早稲田大学大学 在学中に生家を訪れた関係もあり、その後秩父、飯能など埼玉県を何度も訪れています。

大正12年にあった『関東大震災』に伊豆で被災したときの日記も、収められていて、地震の際の村や住民の当時の様子がよくわかりました。

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