埼玉県入間市の建築設計事務所 独楽蔵

広島市環境局中工場(エコリアム)に行ってきました

せっかく、広島に出掛けたので、以前から見たいと思っていた建築を見学に行ってきました。建物は、広島市環境局中工場、平和公園から海側へ伸びる吉島通りの南端に建つごみの処分場です。設計は、ニューヨーク近代美術館:新館や猪熊弦一郎現代美術館、土門拳記念館などで有名な建築家谷口吉生さん。2004年竣工の建物なので、完成から18年が経過していますが、まったく古さを感じません。

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通りを貫通するアトリウム

文字通り、吉島通りの南端で、1階部分は、通りから、ゴミ収集車がそのまま直進して、搬出入のために通り抜けられるようになっています。2階部分は、[Ecology+Atrium]の造語で、エコリアムと命名されたガラス張りのアトリウム。通りから海に向かって清掃工場を貫通しています。アトリウムの両側には、ガラス越しにゴミ焼却装置が並んでいて、自由に通り抜けたり、見学することが可能です。まるで、美術品のように洗練されたメタリックな機械類は建築同様に、とても美しく感じます。

公共性を内包する、見せるごみ処理施設

設計者の谷口さんは、通常、ごみ焼却施設は見えないように隠している建築が多くありますが、現代の都市に必要な施設のひとつとして、外部は意図的に工場をそのまま表現し、内部に何か公共的な空間をつくり、都市施設としての価値を高めようと考えたそうです。

中工場は、広島市の中心部の平和記念公園から、海側へ伸びる吉島通りの南端に建っています。平和記念公園は、建築家 丹下健三氏が、幅員100mの平和大通りに直交させて、原爆ドームに向かう景観軸を定め、その軸上に慰霊碑と、後方にゲートとしての資料館を計画しました。資料館は平和大通りから原爆ドームへの視線を遮らないよう、ピロティ(壁がなく柱だけで構成された吹き抜けの空間のこと)により、空中に浮かせる形となっています。空中に浮かせることで、グラウンドレベルで景観軸を通すという重要な機能や意味を持っています。

平和の軸線の延長線上

そして、このエコリアムは、丹下氏が広島復興の基本計画とした「平和の軸線(原爆ドーム、原爆慰霊碑、平和記念資料館を同一線上に並べた都市軸)」の延長線上に設計されているのです。そして、その軸線を遮らないように、ゴミ収集車の進入路とエコリアムが海に向かって開かれています。

人や場所(広島)との繋がり

それもそのはず、このプロジェクトの設計者の谷口吉生氏は、丹下研究室で建築を学んでいるんです。また、丹下氏と広島の繋がりとして、戦前、愛媛の今治中学を出て、旧制広島高校(現:広島大学)に進学していた丹下氏が、同校図書室で見た外国雑誌のル・コルビュジエの記事に感銘を受け建築家を志したのも有名な話です。

『ドライブ・マイ・カー』(監督 濱口竜介、原作 村上春樹)のロケ地にも選ばれて、その軸線の話も会話の中に登場していました。

その先の2Fデッキは、海沿いに整備された公園と階段でつながっています。海釣り公園になっているようで、家族連れの釣り人で賑わっていました。

逃げの効かない精度の高い建築のディテールもさることながら、サインも恐ろしくシビアで美しいなぁと思っていたら、サイン計画は八木保さんでした。

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