【石州瓦(赤瓦)の集落(石見地方)の街道沿い】
隧道の間の小さな赤い石州瓦の集落
9号線の石見区間を走行したのは初めてでしたが、短い間隔で連続する短い隧道。その隧道と隧道の間に小さな集落が散在している様子で、同じ山陰の鳥取県とは車窓の風景が随分違って見えます。
また、同じ島根県でも、出雲地方と石見地方では随分違うなぁ…という印象で、やはり、もともと国が違うことや、東西につながるのが物理的に困難であることが、実体験としてわかったような気がしました。
雰囲気の違いは感じますが、古い集落の赤い石州瓦の風景は、互いの共通点の一つかもしれません。
国道9号線の先、山口県へ
石見地方は島根県の西部にあり、山口県と接しています。国道9号線は、海岸線を離れ、内陸に向かい、この先も山口県下関市まで続いています。
その街道沿いの古い集落でも、赤い石州瓦の風景を見ることができます。
石州瓦と一般的な瓦の違い
石州瓦の一番の特徴は、その焼成温度にあり、1200度以上で焼成されます。一般的な瓦(銀瓦、三州瓦など)は、900〜1100度で焼かれますので、これはかなり高い温度だといえます。
焼成温度が上がると、それぞれの粒子が結晶化して、せっ器や磁器の性質に近くなります。そこから、固く、水を通さず、凍害に強いなどの特性が生まれます。
結果、長い時間のスパンにおいて変質しない、耐久性のある瓦になります。
日本全国の寺社仏閣などで、よく使われる瓦に「いぶし銀」(三州瓦が多いですが)がありますが、その焼成温度は、1000〜1100度。吸水率は、30〜15%とやや高く、雨が降ると少し水を含み、いわゆる濡れ色になります。
これには、水を含むことによって、その蒸散作用で屋根を冷やすという作用があり、温暖な地域や雨の多くない地方に適した、夏を意識した素材ともいえるかもしれません。
その反面、「いぶし銀」は、日本海側の豪雪地帯や北海道などの寒冷地方では、凍害のために割れることもあったそうです(以前のことなので、現在は違うと思いますが…)。
ですから、石州瓦は、日本海側の豪雪地帯や北海道などの寒冷地方で、シェアが高い瓦です。
ちなみに、レンガや素焼きの焼成温度は、もっと低くなって800〜900度。スペイン瓦や素焼きの壺なども、気化熱によるクーリング作用がより働くようなイメージだと思います。
どの瓦がベストというのはありませんが(好みもありますので…)、これからの時代的には、その地域の風土にあった素材を使用するほうが、よりベターな気がします。
土によって違う瓦の焼く温度
それでは、なぜすべての瓦を高い温度で焼かないのか?という疑問が生じます。
通常の土は1300度で焼かれると、瓦自体が、割れたり、ねじれたり、壊れたりするそうなのですが、偶然にも石見地方で採れる土(都野津層といわれる粘土層)は、高い温度でも問題なく生成できるそうです。
そういう意味合いにおいて、「島根県芸術文化センター:グラントワ」の外装のほとんどの部分が、石州瓦(赤瓦)に覆われていることは、大変意義深いと思いますし、建築的な意味でも理にかなっています。
風土のあらわれた唯一無二の空間だと思います。
ちなみに、この石州瓦、最近では通常、燃料や難易度などの問題から約1200度で焼成しているそうですが、「島根県芸術文化センター:グラントワ」の瓦は、昔の焼成温度の約1300度で焼かれているようです。
また、大壁面に瓦を使用することも、今までと違う使い方です。伝統的な素材には、常にこういった新しい挑戦が必要だと感じる、いい例だと思います。
石見と出雲の材料が出会う瓦
石見と出雲、違って見える2つの国の素材が組み合わさることによって、石州瓦というすばらしい材料ができていることを知ると、本当の意味で風土に根ざした材料である、この瓦の風景が少し違って見えてきます。そして、少し誇らしい気持ちになります。
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