「親類が集まって宴会するのが大好き」という一家のために考えたのは、薪ストーブと囲炉裏テーブルのある一族のための茶の間。10年の歳月を経た現在の住まいでは、3世代の賑やかな暮らしが営まれている。
生火をあやつり使いこなす3世代の住まい
「親類が集まって宴会するのが大好き」という一家のために考えたのは、薪ストーブと囲炉裏テーブルのある一族のための茶の間。10年の歳月を経た現在の住まいでは、3世代の賑やかな暮らしが営まれている。
兄弟は7人、その中で家業を継いだご主人。それぞれが所帯を構えた今も、兄弟とその家族で、しょっちゅう宴会をしたり、旅行に行ったり。そんな関谷さんの話を聞いて、一族がいつでも集える、大一族のためのでっかい茶の間を考えたのが、この家を設計した設計事務所:独楽蔵(こまぐら)だ。さらに、その茶の間には、大きなダイニングテーブルを一体になった囲炉裏を配した。火があると、それだけで自然とみんなが集まってくる。人間はもともと生火をあやつって暮らしてきた生き物だから、火を見ると豊かな気持ちになるんです。
この日、囲炉裏テーブルを囲んだのは関谷さんご夫婦に、娘、息子夫婦と孫3人の総勢8人。3年前から息子夫婦が同居するようになり、毎日がいっそう賑やかになった。近所に住む親戚や友人、仕事仲間が食卓に加わることもしばしばだ。「挨拶するより先に、家に上がっている人も多いのよ」と奥さんが笑うほど、関谷さんの家には人が集まってくる。
大きな茶の間にもう一つの主役がキッチンの脇に設けられた薪ストーブだ。「薪ストーブに慣れると、エアコンでは寒く感じてしまう。薪ストーブだと夜、火を消してから寝ても、朝暖かいんだよ」とご主人がいうと奥さんも「薪ストーブは気分も落ち着くでしょ。みんなここに集まってきてゴロゴロするのね」と続ける。
生きた火が姿を消した現在の住まいに対して、独楽蔵では、家づくりに火を積極的に取り入れてきた。「火を使いこなすとは、点火から消火までの火の生涯を、暖をとったり、食べ物を焼いたりして、いかにうまく生かすかということ」という。だからこそ、ただのファッションではなく、食生活や暖房に生かす生火を提案する。それは「スイッチとスイッチを渡り歩くような生活」ではなく、「労働ができるか、手間をかけられるか、住み手の能力が試される暮らし」でもある。
関谷さんの家には、さらにもう一つ生火を愉しむ場所がある。それは、庭に設けた焚き火場だ。ここは、こどもの頃から焚き火が大好きだったおいうご主人のお気に入りの場所。さらに、夏にはバーベキューのスペースとしても活躍する。近くに暮らす甥っ子や姪っ子が「バーベキューしたいから場所貸して」としょっちゅう言ってくるほど、みんなの人気の場所になっているそうだ。
生火をさまざまなカタチで愉しむ関谷さん一家。自然や地域とゆるやかにつながる暮らし方こそが、生活の中で火を使いこなす極意なのかもしれない。