築50年。新築住宅に建て替え?既存住宅をリノベーション?〜メリット・デメリットをしっかり見極める〜
埼玉県西部に位置する入間市の加治丘陵(かじきゅうりょう)。いくつもの谷や尾根、小さな沢、その豊かな自然環境には、他では見られない希少な植物や動物が息づいており、地元の人たちに愛される美しい風景です。築50年の木造2階建て住宅が建つ敷地は、加治丘陵の谷の部分にありました。お客さまからは「家を新しく建て替えたい」というご相談がありましたが、打ち合わせを重ね、お客さまの希望する間取りや予算を伺うなかで、新築にするメリットが少ないことがわかってきました。
建て替えることも可能ですが、お客さまとの打ち合わせにおいて大切なのは“新築かリノベーションか?”という表面的なところで終わらせないことです。まずはこれから、お客さまがどのような暮らしをしていきたいのか?という未来のイメージを明確にし、整理してあげること。それから予算や現地調査もふまえて、ベストな答えをご一緒に考えていきます。
解体費用や浄化槽の交換、敷地の整備などを考えると、法規的な問題や、金額の問題によって、住宅の床面積も現在より少なくなってしまいますし、敷地の特性や形状から間取りの自由度も制限されそうです。まずは現状の中古住宅が、直して使える建物であるかを判断するために調査させてもらうことにしました。
簡単な図面は残っていますが、数回、行われた増築のため、かなり異なる部分があります。建物の状態を検証した結果、まだ十分に使える部分が多くあることがわかりました。そこで、建て替えのご相談に来たお客さんでしたが「リノベーションという選択もあり得るのではないか?」というお話をさせていただきました。
心地良い暮らしを叶えるフルリノベーションへ〜増築で失われた通風・採光を取り戻すプラン〜
築50年の住宅をリノベーションする方向性が決まりましたので、次はどう改修していくのかのプランの作成です。まず敷地がどういう環境にあるのかを、しっかり見定めていきます。東側が高い台地が壁のように覆いかぶさり、西側は手付かずの「加治丘陵」の雑木林が迫っているという「谷」の地形でした。敷地の北側にある入間川に向かって流れる谷ですので、隣地は北に向かって下がっています。敷地の南側隣地は1m程度地盤面が上がっていて、前の住宅が覆い被さっていますので、こちらからの採光もあまり望めません。
また約50年前に建てられた家は、数回行われた増築によって、元々あった部屋の南側にダイニングキッチンがつくられ、ほかの部屋の採光、通風が遮られていました。そこで予算や建築構造を見極めながら、新しい間取りの再構築をしていきます。
敷地の西側には、手つかずの雑木林が広がっていました。その美しい風景を、借景として取り入れ、また家全体の採光、通風を確保するために、大きな開口部を作りました。また他の部屋の採光を遮っていた、既存のダイニングキッチンを別の場所に移動。リビングが、家の中でもっとも日当たりがよく、居心地がいい場所に配置されるよう、間取りの再構築を行いました。