築50年の一戸建て住宅のフルリノベーション(入間市高倉)

築50年の一戸建て住宅のフルリノベーション(入間市高倉)

加治丘陵は、関東平野と山地との境にあたる丘陵で、凸凹した起伏が多い地形が特徴的な丘陵です。特に谷が発達し、渓流的になっている沢が多いという地形的特徴があるそうです。いくつもの沢や尾根は、多様な環境を造りだすことで、普通ならもっと山奥の方へ行かなければ見られないような植物や動物が、すぐ近くでたくさん生きています。沢は小川となって丘陵の北を流れる入間川や南を流れる霞(かすみ)川にそそぎます。

築50年の木造2階建ての住宅の建つ、この敷地は「加治丘陵」の東の端と台地部分の間の、ちょうど谷の部分に位置しています。今回は、この住宅を建て替えたいというご相談から計画が始まりました。

① 新築住宅にするか既存の住宅をリノベーション/リフォームするか?

もちろん、建て替えることも可能です。しかし、打ち合わせを重ねる中で、お客様の希望する間取りや工事予算を考えると、新築をするメリットが少ないのではないかという考えに至りました。

解体費用や浄化槽の交換、敷地の整備などを考えると、法規的な問題や、金額の問題によって、住宅の床面積も現在より少なくなってしまいますし、敷地の特性や形状から間取りの自由度も制限されそうです。まずは現状の中古住宅をが、直して使える建物であるかを判断するために調査させてもらうことにしました。

簡単な図面は残っていますが、数回、行われた増築のため、かなり異なる部分があります。建物の状態を検証して、お客さんにはリノベーションしてもいいのではないかというお話をさせていただきました。

② 増築で失われた通風・採光を取り戻すプラン

住宅をリノベーションする方向性が決まりましたので、これからはどう改修していくのかのプランの作成です。敷地は、東側が高い台地が壁のように覆いかぶさり、西側は手付かずの「加治丘陵」の雑木林が迫っているという「谷」の地形です。敷地の北側にある入間川に向かって流れる谷ですので、隣地は北に向かって下がっています。敷地の南側隣地は1m程度地盤面が上がっていて、前の住宅が覆い被さっていますので、こちらからの採光もあまり望めません。

 

また、約50年前に建てられた家は、数回行われた増築によって、元々あった部屋の南側にダイニングキッチンがつくられ、ほかの部屋の採光、通風が遮られていました。

敷地の西側には、手つかずの雑木林と空地の風景が広がっていましたので、それを拠り所に借景として取り入れ、かつ家全体の採光、通風を確保するために、大きな開口部を西側に作るようなプランを検討しました。既存のダイニングキッチンの位置を移動して、家の中で一番、日当たりがよく、居心地がいい場所に、リビングが配置されるように間取りの再構築を行いました。

③ コストダウンのために大きな導線を移動せず、解体部分を減らす

中古住宅のリフォームやリノベーションで、コストを抑えるためには、まず壊す部分を減らすことです。一度、解体してしまうとその部分は新たに作らなければなりません。

どこを壊して、どの部分を残すのかという匙加減で、工事費もずいぶん変わってきます。まずは、大きな導線をイジらないように心がけました。「玄関→廊下→階段→2階」、この大きな導線が変わってしまうと、室内を全て新しく作り替えなければなりません。階段や廊下などの位置は基本的に変化させず、部屋の区割りを少しずつ変化させていきます。

④ 続き間をワンルームにしたり、階段や廊下を室内に組み込んで広いリビングをつくる

リビングを明るく、風通しのいい部屋にするために、元々、南北に2つの部屋だった続き間をワンルームにしました。また、住宅の北側に位置していた階段や廊下の一部をリビングの中に組み込んで、北側の外壁の部分までリビングの空間を広げています。

リビングは東西南北に新しく窓ができたことによって、どの方向からも風が抜けますし、以前に比べて随分明るくなりました。

⑤ キッチンは造り付け食器棚&テーブルでリビングとゆるやかに分離

リビングを少しでも広く使うために造り付けテーブルを造作しました。テーブルは食器棚と一体になっていて、リビングとキッチンを緩やかにゾーン分けしています。

作り付けの食器棚によって、キッチンの奥やキッチン家電が物陰に隠れた状態になりますので、リビング空間をスッキリと保つことも容易です。

⑥ 家の中で一番、日当たりがよく景色のいいバルコニー

リビング部分は過去の増築部分で平家になっていました。元々の建物では、大きなトタン(カラー鉄板)の屋根になっていましたが、かなり劣化していましたので、全面防水工事を施して、大きなバルコニーに作り替えました。家の中で一番、日当たりがよく、景色もいい場所です。

床にはデッキ材を敷いてテラスにすることも考えましたが、コストダウンするために、床一面に人工芝を敷き込みました。

⑦ 屋根、外壁周りの改修工事

既存の建物の屋根は、瓦屋根でした。瓦は耐久性や断熱性に優れているために、50年経過していても材料自体の問題はありません。調査の結果、ズレや割れもありませんでしたので、現状のまま使用することになりました。これだけでも200万円〜300万円程度のコストダウンになります。

アルミサッシは全て新しくして、断熱性能の高いペアガラスに取り替えました。外壁も、なるべく解体する部分を減らしながら、既存の外壁の上からサイディングを施工していきました。

リノベーション前の建物外観