栃木市の新築住宅、リノベーションは一級建築士事務所/独楽蔵へ

【蔵の街・栃木市でよみがえる築180年の店蔵】蔵のリノベーション

江戸末期の面影を今に残す店蔵のリノベーション計画

“180年の時を纏う“店蔵”、宿場町の記憶がそこに。時を越えて、ここに新たな風を吹き込みます。

栃木市に、築180年の歴史を刻む「店蔵」があります。その建物は、江戸時代に市内を流れる巴波川の舟運と、例幣使街道の宿場町として栄えた「栃木宿」の中心に位置しています。戦災を免れたことで、今も多くの蔵や町家が残るこの街は、「蔵の街」として知られています。

今回のリノベーションの舞台となったのは、「中田家住宅店蔵」(登録有形文化財建造物)。切妻造・平入、総2階建ての土蔵造りで、推定築年は江戸末期。桁行5間(約9.1m)、梁間3間(約5.4m)と大きな規模を誇り、黒漆喰の外壁と高い棟が、重厚な存在感を放っています。

【店蔵フロント部分のディテール(黒漆喰・銅板巻きなど)】

商いの記憶を紡ぐ建物

どんな商売が営まれていたかは定かではありませんが、長い年月の中でお煎餅屋さんや衣料品店など、さまざまな商いがこの建物を使って営まれてきたようです。今回は、新たにテナントとして貸し出すため、多目的な用途を見据えたリノベーションを行いました。

【室内からガラス戸を通して中庭を眺める】

建物は長い年月の間に幾度となく増改築が繰り返されており、当初のかたちは曖昧になっていました。そこで私たちは、建物外観も内部も、可能なかぎり原型に近づけることを目指して計画を進めました。

【柱の追加や基礎・ブレスの新設による耐震補強】

宿場町の奥行きを生かして

宿場町特有の「うなぎの寝床」とも呼ばれる奥行きの深い敷地。その奥には庭や蔵、納屋などが建ち並び、母屋の蔵も奥行き約9mと大きなものです。そこで、表通りから、室内を通して、明るい中庭が望めるよう、蔵の奥には大きなガラスを設置。ガラス引き戸は、庭への出入り口も兼ね、空間に緩やかな繋がりをもたせました。

【室内から表通り(栃木宿・例幣使街道)を見る】

解体の中から現れた、歴史のディテール

建物フロントの両側に付け加えられた増築部や、正面のアルミサッシを取り払うと、建物本来の姿が現れました。袖壁には、亀甲紋の銅板張りの腰壁が施されています。当初は袖壁を新たに設ける予定でしたが、この発見を受け、昔ながらの意匠をそのまま活かす方向へと計画を変更。建物が自ら語りはじめるような瞬間でした。

解体時の様子はこちら

【ミニキッチン・洗面台・トイレなどの水廻りは黒いボックスの中にまとめる】

室内には店舗や事務所として使えるよう、トイレや洗面台、ミニキッチンなどの必要最小限の設備を整えました。

2階に登る階段は、備え付けの立派な箱階段を再利用することに。滑り止めや手すりを加えて、安全性にも配慮しています。

室内には、建物の耐震性も考慮して、原型を崩さない程度に柱や基礎、ブレスを設置。

【床に杉材を張った2階の様子】

2階にあらわれた、大工たちの手仕事

もともと天井の低い部屋だった2階は、子ども部屋として使われていたようですが、天井を取り払ってみると、そこには驚くほど美しい小屋組が姿を現しました。江戸の大工たちが、人力だけでこれを組み上げたことを想像すると、ただただ感嘆するばかりです。

この素晴らしい空間を活かすべく、当初の予定にはなかった床張り(杉の無垢フローリング)や土壁の塗り直しも施しました。

【土壁のテクスチャーディテール】

2階の壁は雰囲気を変えて土壁仕上げ

「淡路中塗り土」

淡路島は瓦の産地ですが、瓦用の粘土の副産物「粉土」といわれる粘土を粉砕乾燥させた土壁原料です。質感、色共に、土の素材感をちょうどいいバランスで感じることのできる魅力的な材料です。

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