埼玉県坂戸市の古民家リフォームは一級建築士事務所/独楽蔵へ

坂戸市の築120年 古民家リノベーション 住み継ぐ家のかたち

埼玉県西部のさ坂戸市に建つ築120年の古民家。馬屋や下屋、作業場が点在する広い敷地は、かつて農家住宅として、ご主人の祖父母が暮らし、長く地域に根ざしていました。

数年間に家主を失ったこの家は、空き家になっていましたが、ご家族よって大事に維持されていました。コロナ期を経て、お孫さんご夫婦があらためて、この家を生活の場として活用することになりました。農家住宅として、長い歴史のある間取りや記憶を継承しながら、断熱・耐震・採光・通風といった現代の暮らしに必要な性能を備え、改修を進めることになりました。

【改修前の様子】

【玄関土間から見るキッチンスペース】

新たにこの地に暮らすことになる奥様は、家の近くにある広い畑を活用して、本格的に農業に取り組むことにされたそうです。そして、今回の改造の計画も「暮らし」と「生業(なりわい)」が、ゆるやかに共存する空間を目指しました。「農業と共にある暮らし」を支えるキッチンには、仲間や地域の人々が集い、ワークショップなども開けるような、ラボ的な機能も取り入れています。この場所から、また新たな風景や出逢いがあるとうれしいです。

玄関土間には新しく、登りやすい階段を新設。古い箱階段は、壁の一部に固定して、物入れ(飾り棚)として再利用しています。

【タイルを使ったキッチンスペース】

床は杉の無垢材(オイル仕上げ)。室内の一部には、@refactory_antiquesさんにチョイスしてもらった古建具も再利用しています。

【改修工事の様子】

燃やせるモノが多い、屋敷では暖房と片付けができて一石二鳥です。

既存の天井を解体して、立派な小屋梁をあらわしに。

解体の作業中に、古い畳の下から現れたのは、黒光りした杉の荒板でした。この質感が気に入ったお客さんと相談して、この材料を仕上げの床材として、再利用することになりました。板材は、薄くて強度もなく、取り付けも上部から釘打ちになってしまいますが、板の下に合板を増し張りすることで、強度と気密性を確保しました。

古い材料と新しい杉の無垢板のコントラストがキレイです。

家族の時間と仕事のバランス。地域や農業の再生。空き家の増加や、資材・建築費の高騰。自然素材やエネルギーの選択。さまざまな課題が複雑に絡み合う今だからこそ、見つめ直したい「住まい」のカタチ。