埼玉県日高市、入間市の子ども園、幼稚園の新築工事/リフォームは設計事務所・独楽蔵へ

ひとりひとりの育ちを おおらかに包む【埼玉県日高市 幼保連携型 フレンド認定 こども園】前篇

埼玉県西部に位置する日高市は、のどかな田園風景が残る穏やかな地域。日和田山や高麗川など、遠足やトレッキング、キャンプの聖地としても知られています。今回はそんな日高市で、既存の幼稚園から、幼保連携型の認定こども園への移行に伴う、建て替えの大プロジェクトです。新興住宅地「こま武蔵台」の開発と共に成長し、地域の子育てファミリーをあたたかく見守り続けてきたフレンド幼稚園。その歴史と記憶を継承しつつ、新たな「認定こども園」としての出発をめざします。先生や保護者の皆さまのさまざまな想いを反映させ、明るくのびやかな空間を創るために、計画を進めていきました。

目 次(クリックすると開きます)

愛おしく、かけがえのない育ちの空間を紡ぐ〜「幼稚園」から「幼保連携型こども園」への移行〜

地域に長く愛されてきたフレンド幼稚園は、創立から約40年。建物や設備の老朽化の問題がありました。また保育・教育行政の変化に伴い、数年前から「幼稚園」の形態から「幼保連携型のこども園」へ、施設を移行する準備も進めていました。建て替えにあたっては、手狭な現在の敷地から、近隣地へ移転することも検討されましたが、卒園した方々の思い出が多く残るこの地で、建て替えをする方針に決定しました。日高市や飯能市と幅広いエリアから通園する子どもたちと、そのご家族にとって、子育てのベースとなる大切な場所。法令も含めたさまざまな課題を、園と共に考えていきました。

子どもたちの、まっさらな存在をおおらかに包み込むような、白を基調とした外観。そこに、色鮮やかなモザイクタイルや丸窓など、遊び心のあるデザインを程よく散りばめることで、空間全体が生き生きと動きだします。まさに、人格形成の礎となる乳幼児期。内外共に気持ち良く、安心安全で、何より楽しい日常の風景となっていくように、心がけていきました。

日々子どもたちを迎え入れる、新しいアプローチ(園舎への導入口)について考える

敷地は3方向道路に面している立地ですが、そのうち2つの道路は、高低差があり敷地内に進入することができません。新しいこども園へのアプローチ(玄関までの通路や導入路)も従来通り、慣れ親しんだ西側の道路からのアプローチとなりました。園バスで、徒歩で、クルマで。さまざまなスタイルで登園してくるすべての親子にとって、機能的で、安心できるアプローチをめざします。

かけがえのない子どもたちの記憶に残る空間を〜約30年愛されて続けてきた幼稚園の風景を残す配置計画〜

新しい「幼保連携型 認定こども園」は、園児の収容人数に対する「保育室」の数、「園庭」の広さを確保するために、建物を2階建てにする必要がありました。木造の園舎が理想でしたが、2階建てになると、安全性の問題から建物を「耐火建築物」にする必要があり、新しい園舎は法規的な側面から重量鉄骨造の建物にしました。唯一、離れの平屋の保育室は、木造で計画してあります。敷地東側の擁壁や大きな桜、遊具などは、安全性を十分に確認した上で、幼稚園だった頃と同じ状態で、当時の記憶を残しています。幼い頃に過ごした空間の記憶は、いつまでも心に残る大切なもの。園や保護者、卒園生などの声を聞きながら、新しくするものと残していくものを、決めていきました。

園児も大人も楽しく集い、楽しく行き交う〜園舎エントランス前の大きな軒下スペース〜

エントランス前には、大きく計画した建物のピロティー(上部に建物が載った外部空間)を設け、通園バスの車寄せ、園児の受入れ、集団で外出する際の集合スペースなど、悪天候の日も余裕のある空間にしてあります。園の門扉も軒下に配置することで、園児の安全性も確保。また、多くの人が出入りする軒下部分には、インフォメーションのための園の掲示板や木製のポストなども配置してあります。

軒下の広いエントランスポーチは門扉で子供たちの安全性も確保

お誕生会にクリスマス。発表会も日々の遊びも〜遊戯室(ホール)は子どもと保護者、そして地域の人の共有スペース〜

遊戯室は、子どもたちが元気に走り回ったり、いろいろな年中行事や楽しいイベントが行われたりと、この「こども園」の中でもっとも、活動的で活性化した空間といえるかもしれません。また、放課後や休日に子ども達を対象としたバレエ教室やクラブ活動が行われたり、園児以外でも、保護者の方々、主に、お母さんたちが主体のサークルやバザー、講演などの活動の場でもあります。自由な発想やコミュニケーションが生まれるように、ゆとりのあるおおらかな空間づくりを意識しています。子どもは遊びの天才です。こちらの想像をはるかに超える楽しみ方を見つけてくれるかもしれません。

この活動的な空間は、高齢化が進む『こま武蔵台ニュータウン』の活性化を担う空間づくりもめざしました。計画の際は、この空間を園児やそのご家族はもちろん、地域全体で共有できるように考えました。道路から、内部の気配が感じとれ、すぐにアプローチできるように、エントランスのピロティ脇に遊戯室を配置。また、その遊戯室をピロティを一体的に使用することも可能なように開口部も設けました。外と内の動線をゆるやかに繋ぐことで、より地域に開かれた空間であることを表現しています。

遊戯室と広いピロティは、一体化して使用できるような配置になっています。ピロティーは、門扉を閉めると、子どもたちの外出の際の待機場に。遊戯室や園のアプローチの様子は、ピロティーの反対側に配置した職員室から、つぶさに眺めることが可能です。門扉・タイル製ついたての裏側は、ちょうど良い物陰になっていて、カラーコーンや傘立てなど、いつでも出し入れしたい日常のアイテムを収納することができます。子どもから目を離せない職員の皆さんが、日々の活動をスムーズに進められるように、細かなアイディアを入れました。お忙しいなか、何度も会議を設けてくださった先生方の貴重なご意見が、新しい園舎をカタチづくっていきます。

遊戯室の後方の絵本のある溜まり場(図書スペース)。遊戯室を使った催しの際は、ひな壇状の客席スペースにもなります。

やわらかな心を育むデザイン空間〜地元「西川材」の杉無垢材自然素材で創る絵本コーナー〜

遊戯室の後ろ側は、本棚と小さな円形テーブルを配置した絵本コーナー。床はひな壇状に段を付け、地元「西川材」の杉無垢材で仕上げました。園児が触れる部分は、なるべく自然素材で。絵本コーナーの背面の大きなFIXガラスは、道路に面していて、道路からは内部の様子が間接的に見えます。子どもたちにとっての秘密の場所であり、いくつもの物語が生まれる場所。そして大人が自然に見守ることができる開放感もあります。

以前の園舎から受け継がれたイラスト窓

半円形のカラフルな窓は、フレンド幼稚園の時代から遊戯室の正面に配置されていたモノ。遠くから見るとステンドグラスに見えますが、昔の保護者のお母さまが油性のペンで描いた絵です。卒園生や保護者の皆さまにとって、深い思い入れがあることがわかり、園の大切な記憶の一片として、新園舎にも移設して残すことにしました。園舎の前を懐かしく通り過ぎる卒園生やご家族にとっても、大切な心のよりどころであり続けるためにも、こういった作業がとても大事だと考えています。

園庭から園舎の眺め

子どもたちの目線に近い部分、触れる部分は、なるべく国産の天然素材に。腰壁部分も、杉の無垢板の飾り張り。

建物の最高高さが8mというかなり厳しい地区計画があるなかで、最大限の広さを確保するために、間取りを工夫して天井の一部をあげる。少し床があがったステージ部分は、杉の無垢フローリング張りになっています。

【バレエ教室用の鏡(移動式)】

以前から、課外活動としてバレエ教室が開かれていた遊戯室。バレエの先生より、リニューアルの際にぜひ、大きな鏡がほしいとご要望をいただき、検討を重ねました。窓や入り口があったりと大きな壁面がなく、普段はこどもたちが活発に遊ぶスペースなので、日常的に鏡が出ているのは非常に危険です。そこでスライド式で収納できて、使うときだけ出すような仕組みにしました。

鏡が重いので、幅900mmの建具2枚に分割しましたが、自由に動かせますし、分割して使うことも可能です。

2階部分は、0、1歳児、2歳児、3歳児のスペース。大きな屋根の張り出した外廊下は、小さい子供たちの安全な外遊びの場所でもあります。

1階教室(年長・年中クラス)

Close(閉まっている)の時こそ、明かりを〜建築にとっての照明(ライトアップ)の必要性〜

施設や店舗を設計する時には、その建物が閉まっている時や、夜間にどう見えるかということも考えます。近所の方々や通りを行き交う人たちなど、施設が開いている時以上に、建物はよく見られているものです。夜になって廻りが暗くなるので、逆にうまく照明を使うと、上品に引き立たせることもできます。

エントランス部分のダウンライトは、タイマー式になっているので、一定時間、入り口を明るく照らしてくれます。遊戯室を使ってる時は、木製の飾り枠を四方に廻した正面の大きな窓と側面のステンドグラスで、中の様子や明かりがキレイに見えるばずです。

1階平面図(間取り図)&配置図

WORKS:フレンドこども園 ディテール集はこちら
建築スケッチ:計画時のフレンド認定こども園のコンセプトイラスト

その後の暮らし:フレンドこども園(日高市) 2020年夏(竣工から2年半経過)
その後の暮らし:フレンドこども園 その後(引き渡し3日後)はこちら

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関連リンク(クリックすると開きます)

【日高市 フレンド 認定こども園 新築工事 工事現場だより】
園児や保護者の皆さん、先生方に現場の様子や工事の流れをご説明するためにつくった冊子です。
part1 2017/08〜2017/11まではこちら
part2 2017/11〜2018/01まではこちら

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