サーフィン と のびのび子育て 平屋の暮らし(千葉県匝瑳市 I 邸)
海と広い敷地を求めて九十九里の匝瑳に移住
南に広い開口部を作ろう
子どもの育つ家をデザインするとき、独楽蔵がまず考えるのは、南に向かって大きく開いた家にすることだ。
リビングなどメインの部屋を南側に配置してそこに広い開口部を設けないと、子どもがのびのび育つ家づくりは始まらない、風も光も季節感も南から家の中に入ってくる。何より、それらの自然を感じることが、子どもの感性には必要だ。
逆にいえば、南に向いた広い開口部を設けることができればほかのことには、少々目をつぶることも可能になる。
そのためには、まず、敷地に対して家をどう配置するかという配置計画が重要になる。独楽蔵がよく採用するのが、四角い敷地に四角い平面の家を配置するのではなく三角形の平面の家を配置する方法。これによって、敷地の対角線に沿って大きな開口部を設けることが可能になる。
四角い平面では、南側の開口部の長さは、最大でも敷地の一辺の長さだが、三角形の平面では敷地の対角線の長さまでつくることができ、家の外と内のつながりをより強くすることが可能である。
同時に室内から見る視線が、敷地のもうひとつの対角線方向を見ることになるので、庭の奥行きが深くなり、敷地の外の道路や隣地との距離を大きくすることができる。
反対から見れば、家の中に直接はいってほしくない外部の視線などを、適度に遮断することになる。開けて暮らすからこそ、配置計画が重要になるのだ。

リビングの開口部は、間口3600mm ガラス戸引き込み・全開放・真南向き

リビングの大開口からデッキテラスの繋がり。奥に見えるのは子ども部屋

左の造り付けた金属梯子(紺)は、「物見台」に上がる経路。数m上がっただけでも、吹く風の香りが変わる

デッキテラスの真ん中にある玄関を挟んで、右が家族のスペース、左が子どもたちのスペース(子供部屋(左)・玄関(中央)・リビング(右)を一体化するデッキテラス)

リビングの床は、千葉県産材の杉無垢材

壁はシナ合板 目透かし張り

キッチンカウンターは、米松(ピーラー)の厚板を使用
上部には作り付けの棚つき

玄関建具は、造り付けのガラス引き戸
家族の距離感から考える:こども部屋
玄関に入ると、左右に分かれた2つの床。右は、家族のスペースで、左はこどものゾーンです。
それぞれの行き来には、「飛び石」ならぬ「飛び丸太」で渡っていきます。
そこには、ぴょんと飛び越えられて、靴履かなくても渡れる、ほんの数十センチの隙間があるだけ・・・。それでも、互いの空間には、見た目にも、心理的にも、不思議な距離感が生まれます。距離は近くても、「あっちとこっちの感覚」、「渡りの感覚」、「境界の感覚」、表現の仕方はいろいろありますが、床が離れていることに、やはり意味があるんです。
家族間の距離感について考えてみると、親の立場からは、いつでも、こどもの気配の感じられたりや見守りができる距離が安心ですし、こどもたちは、(年齢によって変化してくると思いますが)「ここは、こどもだけの世界」と感じられる空間を求めている気がします。
この異なる2つの要素が重なる距離、それが、一番ちょうどいい距離ではないかと思うのです。
思い起こせば、私の学生時代、庭の片隅に建てたプレハブの離れを子供部屋にしていた友達は、みんなの憧れでしたし、やっぱり仲間の溜まり場になっていました。まぁ、それでは、ちょっと母屋とは離れすぎなのですが・・・、「飛び丸太」の子供部屋は、こどもの感覚的にはそういう距離が近いような気がします。
そういえば、この家の平面計画をしていた際のお父さんの心配ごとはというと・・・。
子供部屋が割と独立しているので、将来、こどもたちが大きくなったときに(高校生くらいになったときに)、勝手に夜遊びしたり、悪い友達の溜まり場にならないか・・・ということでした・・・。
ご主人のお話をよく伺ってみると、「何故って、ご自分が若い頃、そうだったから・・・。」ということでした(笑)。
そんなこの家も、完成してからずいぶん時間が経ちました。今年いただいた年賀状には、「こどもたちが、大学、高校のダブル受験で大変です。」といった言葉が添えられていました・・・。
その後の子供部屋がどうだったか、子育ての先輩としてのお話を伺ってみたいです・・・。

2つの子ども部屋の一体使用 ①
こどもが小さい時期は、小さな2つの子ども部屋をくっつけて、一体使用。木製の造り付け梯子の上は、ふとんの敷ける広さのあるロフト

2つの子ども部屋の一体使用 ②
ロフトへの梯子と子ども部屋への出入り口は、もちろん2つ

子ども部屋 ロフトの床収まり

こども部屋と玄関の関係性
わんぱく兄弟K&Rのこども部屋
男子:2人兄弟の子供部屋
杉の無垢材の床板には、裸足がよく似合います。小さいうちは、ヒョウタン型の部屋を一緒に使って、大きくなったら、それぞれ個室に・・・。
ケンカになりそうですから、入口もそれぞれ2つ、もちろんロフトの梯子も2つです。壁は、シナ合板の目透かし張りで、それぞれのイニシャルK&Rの飾り張り・・・。

『シナ合板目透かし張り』の目地デザインは、こどもたちのイニシャル『K』&『R』

寝ているときに落ちないように、低い手すりも設置したよ!

ロフトは立つことが出来るし、布団も2組敷ける!
ロフトの壁は、ラフに構造用合板9mmの無塗装
わんぱく兄弟の子供部屋 (ロフト)
それぞれ兄弟専用のハシゴを登るとロフトがあります。ロフトといっても、大人でも充分に立てる高さ・・・。お兄ちゃんになった時のことも考えて、布団も、ちゃん2人分とひけるサイズにしています。
手すりは作ったけど、寝ぼけて落ちないでね・・・。
工作好きのお父さんとDIYが出来るように、壁は合板のまま・・・。気分のままに好きな色にペンキを塗るのもいいですね・・・。厚みが12.5mmありますので、釘やビスを何処にでも打ち放題です。どんどん自分色の秘密基地にしていってほしいです。一番、接触のある床は、やっぱり杉の無垢材です。

施主支給のアンティークドアをリビングの出入り口に

納戸の隅には、家族の手形

手洗いボールも施主支給品

西側道路からの眺め


子どもゾーン


わんぱく兄弟の子供部屋 (バルコニー:物見台)
ロフトの外には、小さなバルコニーがあります。バルコニーには、外のハシゴからもアプローチ。子供部屋→ロフト→バルコニー→ハシゴの回遊性のあるこども空間・・・。





おまけ1:新築上棟時の施主のお子さんの絵日記
おまけ2:竣工後にお客さんから頂いたお手紙
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