【暮らしnote No.06】
writing:maiko izumi
埼玉県入間市にアトリエを構える建築設計事務所 独楽蔵 KOMAGURAが設計した新築木造住宅に住む生活者(maiko izumi)から見える日々の暮らし
自宅の玄関に飾った梅
「ご自由にお持ちください」その嬉しい張り紙は、小さなカフェの店先にあって、水を張ったバケツに、梅の切り花が何本か入っていた。喜んで、白い梅をひと枝、頂く。梅は、いい。紋様のような可愛い花と、それとは対照的な木々の無骨さ。シュッと音を立てて描かれたような、大胆な枝ぶりも魅力的だ。
桜ほど目立ちはしないけれど、毎年、梅の開花前線も発表されていて、ゆっくりと春の訪れを待ちわびる風景の立役者だと思う。近所に、お気に入りの梅見スポットがいくつかあって、あそこは白梅。ここは蝋梅。水車小屋の横にある紅梅は、下から仰ぐように見上げると、澄んだ空によく映える。駅の近くの枝垂れ梅は、それは見事で、信号待ちが楽しくなる。
雅な時代の方たちは、梅の花の美しさはもちろん、その馥郁(ふくいく)とした香りに惹かれて、恋の駆け引きに使ったり、歌に詠んだりしたようだ。
さっそく、玄関に飾ってみる。香水、洗剤、消臭剤。何事も香りが強い現代において、梅の香りは、驚くほど、微かで、儚い。蕾も、咲きかけも、パッと開いた姿も、何処もかしこも愛らしい花に、うっかり触れて落としてしまわぬよう、そっと頬を寄せてみると、ため息ほどの甘い香りをくれた。昔も今も、こんな香りに気づける繊細さがあってこそ、恋に落ちも、落としも、できるのだろう。
玄関がそこはかとなく、やわらかい空気に包まれる。家族は、この香りに気づくだろうか。 夜、帰宅した息子が「俺、玄関に入った瞬間に、」と誇らしげに語りだした。
なんと、君もいよいよ、そういった繊細さに目覚める年頃か。
「玄関に入ったその瞬間にもう、匂いだけで今夜の夕飯のメニューがわかるんだよね。肉か魚とかっていう初心者レベルじゃなくて、唐揚げか、コロッケか、ハンバーグかっていう微妙な違いまで、わかっちゃうんだよね」なるほど、類稀なる才能である。しかしそれは間違いなく、恋に落ちたり、落としたりするのには、全く活かせない類いの繊細さなのだった。
おそらく君の春は、まだ遠い。
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この住宅の完成時の様子はこちら↓
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