我が家の静かな夜に鳴る“ピー”の謎

我が家の静かな夜に鳴る“ピー”の謎

—30年目の家で起きた小さな事件

約30年前に住宅を建てたお客さんから、久しぶりにお電話をいただきました。
「昨日の夜から、定期的に“ピーッ”っていう機械的な音がするんです」とのこと。

場所は、リビングの薪ストーブのあたり。
娘さんたちと耳を澄ませたり、ストーブの裏を覗き込んだり、
最後には「火をつけたら止まるかも?」と、実際に焚いてみたそうですが……音は鳴りやまず。

設備? 電気? それとも、ネズミやハクビシンの侵入?
いくつか可能性をお伝えしましたが、最終的にはやっぱり——
「事件は現場で起きているんだ!」(by 青島刑事)ということで、翌日、現地にお伺いすることに。

ところが、電話を切ったあとにピンときました。
「もしかして……火災報知器の電池切れの音では?」

すぐにお電話をかけ直してその旨をお伝えし、翌日伺うと、やはり的中。
薪ストーブの上に設置された火災報知器が、律儀に“ピーッ”と知らせてくれていました。

そういえば我が家でも、完成から十数年が経ったころ、
家中の火災報知器がいっせいに鳴り出して、
原因が分かるまで家族全員で右往左往したことを思い出しました。

静かな夜ほど、あの“ピーッ”という音はやけに存在感を放ちます。
でも、それは同時に——
家が長い時間を経て、ちゃんと働き続けている証でもあります。

火災報知器の寿命は、一般的に約10年。

電池の交換や本体の入れ替えは、どんなに丁寧に使っていても必要になります。
住まいの“安全を守る仕組み”も、家族と同じように年を重ねていくのです。

建物は、完成した瞬間がゴールではなく、
そこからゆっくりと「時間とともに育っていく存在」だと感じます。
今回の“ピー音事件”も、そんな家の声のひとつ。

みなさんのお宅でも、「夜な夜なピーッ」という音がしたら、
まずは天井を見上げてみてください。

犯人は、案外すぐそこにいるかもしれません。
そして、その音は、家がこれからも安全に暮らせるようにと
静かに知らせてくれている“合図”なのかもしれません。

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