川越市の子育て世代、木造新築住宅の家づくり

家族のしあわせを育む有機的な暮らし〜車通りの多い場所に建てる木造新築住宅(川越市)

埼玉県の川越は、“小江戸”という名前の通り、古きよき街並みが観光地として親しまれ、また文教地区としても人気のあるエリアです。今回の敷地は、そんな川越市の郊外。敷地の北側を流れる用水路を境に、穏やかな住宅が並ぶ市街化区域と、広大な田畑がひろがる市街化調整区域にわかれています。敷地の東側に走る道路は抜け道になっており、予想以上に交通量が多いというのも特徴です。お客さまは、小さなお子さま2人がいる4人家族。のどかな環境を活かしつつ、クルマの往来にも配慮できるような、有機的な空間づくりを計画していきました。

住宅の配置計画の課題は、「クルマとヒトの分離」から

まず計画の初めのミッションは“いかにしてクルマと人間の暮らしを分離するか”ということでした。問題は①道路を往来するクルマから暮らしを守る②出し入れしやすい自家用車の駐車スペースを確保する、という2点です。この住宅は、敷地が一方通行のT字路の突き当たりに位置していました。ちょうど車が路地から出てくる方向と重なりますし、意外と交通量も多いので、車の騒音や夜のヘッドライドを考慮し、道路面(東面)の外壁は、小ぶりな突き出し窓を通常より少し高い位置に配置しました。住宅の道路面(東面)の外壁は、いわばプライベート空間をしっかり守る、堅牢な防壁となります。

建物の位置をあえて道路から奥に配置し、そこに駐車スペース(2台分)を配置しました。そうすることで、自家用車自体が交通量の多い道路との、よいクッションになります。リビングの大きな開口部と、そこから繋がるデッキテラスは、道路に背を向けた、南西部分に配置しました。また、玄関ポーチ一体のデッキテラスと、隣地との間に植えたグリーンスペースによって、外部空間を上手に活かしたプライベート空間を確保することができました。

瑞々しいエゴの木、アオダモ、イロハモミジの木々が、ご家族と共に育っていきます。完成当時、芽吹きの遅いアオダモは、葉がやっと開いたところでした。アプローチはデッキを回り込むように。

防備とメンテナンスを重視した、北側外観。車通りの多い道路に面しているので、なるべくすっきりと。

隣家との程よい距離感が、快適な暮らしに繋がる〜隣の敷地との間に緩衝地帯としてのグリーンベルトを〜

敷地の南側は、隣の住宅のための導入路兼駐車スペースになって、第三者が通行します。直接、敷地の中を見ることができる状態なので、プライベートな空間を守るための配慮が必要です。

通常であれば、塀などを建てて、プライバシーを確保することも考えられますが、外部スペースが狭く感じられたり、室内の日当たりにも影響します。そこで外壁は作らず、境界沿いに奥行き約1mの緑樹帯を設置しました。木々がもう少し大きくなってくれば、視線を遮ることもできますし、木々はリビングやデッキテラスに気持ちの良い木陰を提供してくれます。

玄関ポーチも南側のデッキテラスとゆるやかに繋がり、外部空間の広がりを演出しています。リビングの開口部は方位と他人の視線を考えて配置。室内が覗かれにくいような平面形を考えました。プライベート空間がしっかり守られながらも、開放感を感じることができます。

デッキテラスとリビングは“入江”と“岬”のように〜絡み合う『OUTSIDE』と『INSIDE』の空間デザイン〜

家族が長い時間を過ごすリビングスペース。その大きな開口部は、南西のデッキテラスとその先のグリーンスペースに向かって開いています。開口部が南西に向いている理由は、敷地の東側にある交通量の多い道路と車から、生活のスペースを、しっかり分離するためです。

『岬』のように南東に張り出したリビングは、『入り江』のようにリビングに入り込んだデッキテラスを隠す防壁の役目も果たしています。『OUTSIDE』&『INSIDE』は緩やかに重なり合って、デッキスペースは、心理的にもリビングの延長として融合しあっています。お互いを開放しながら、包み込む。境界線をゆるやかに行き交う、空間です。

敷地の南側に入り込むと、デッキテラスもリビングもかなりオープンですが、帯状のグリーンスペースの外(南側)は、気心の知れた隣人家族が通るだけの通路なので、プライバシーも確保されています。

リビングのフローリングは、あたたかみのあるオーク材(無垢材)のオイル仕上げ。小さなお子さまたちが、裸足で気持ち良く過ごせる素材です。デッキテラスのデッキ材は、木質と樹脂を合わせたハイブリットのデッキ材を使用しています。

道路側(東側)の突き出し窓は、取り付け位置を少し高くして、ガラスは型ガラス(くもりガラス)にして、プライバシーを考慮しています。外からの目線は気にならず、明るさのある空間が叶います。

おいしい時間を創り出すキッチン〜リビングの入江、くぼみ部分に配置〜