埼玉県日高市の新築木造住宅は建築設計事務所/独楽蔵へ

【設計事務所がつくった住宅に暮らす生活者目線 】 田舎暮らしの理想と現実

【暮らしnote No.02】
writing:maiko izumi

独楽蔵の設計した家に住む生活者目線の気づき

憧れのひとり暮らしは、東京の小さな白いアパートだった。狭くても、寒くても、若いから、へっちゃらだった。雑誌に載ってるカフェを巡ってみたり、ジョギングする俳優を見かけても驚かないコツを身につけたり。酔いを醒ますために、夜風に吹かれて歩いて帰る楽しみも知った。便利で、新しいものがすぐ手に入る、いつでも好きなライブや美術館に行ける。感性のアンテナが研ぎ澄まされるような、キラキラした東京が好きだった。もちろん今でも大好きだ。

そんな私は今なぜか、東京から離れた片田舎に暮らしている。「片田舎」って「両」ではなく、「片」なのだから、ちょっと都会寄りのプチ田舎といったところかと思っていたけれど、あらためて辞書で調べてみると「片」は、人の目に立たないという意味で、人里離れた、不便な村里を指すのだそうだ。結局、田舎ということだろう。

住みはじめた頃は、驚きの連続だった。夜が暗い、というか黒い。どこからか得体の知れない遠吠えが聞こえて、イノシシ駆除のお知らせが回覧板で回ってくる。小学校からの緊急メールは、不審者情報ではなく、猿の目撃情報だった。今までの人生で、出逢ったことのない、ゴムのおもちゃのような赤黒い大ムカデに遭遇した時は、シャイニング級に絶叫し、それにつられて子どもたちも号泣。阿鼻叫喚という四字熟語にふさわしい場面が繰り広げられた。

【家の下の高麗川で水遊び】

住めば都なんていう言葉は、くそくらえで、10年以上住んでも、ここは確実に不便だし、決して「都」ではない。巷の住みたい街ランキングには、この先も入ることはないだろう。けれど、自然に囲まれる有機な暮らしに憧れる夫に、間違いなく、騙されるかたちではじまったこの暮らしが、今は結構楽しい。山の色や川の澄み具合。風の通り道が、どの辺にあるか、肌で感じられるようになった。薪ストーブの薪も、これは長く燃える薪。こっちは着火に向いてる、と感覚が掴めてきた。

人も、のんびりとおおらかだ。ちょっとクルマが運転できれば、行動範囲はグッと広がる。すてきなお店も、想像以上に多い。筍、梅、のらぼう菜、桑の実、ヤマモモ、ムカゴにキノコ。おいしいものと一緒に、季節が巡っていく。

でも「ほらね、よかったでしょ」という夫の言い分は、どうも解せない。私の前向きな性格があってこその現在だということを、夫には肝に銘じてもらいたいのだ。とはいえ、子どもはそこそこすくすく元気に育ち、仲良くなった大人同士で、今まで見た一番大きなムカデはどれくらいか、といった会話をナチュラルにできるようになった。

道路のあちこちに、ペシャンコになったカマキリの死骸を見かけるようになると、秋の深まりを感じる。すると、そろそろ雪虫が飛ぶ頃か。それもこれも、なんだか愛おしい風景になってゆく。都じゃなくても、住めばふるさと、だ。ちなみに、私が震えながら「家にムカデが出た」と報告すると、夫は決まって「ムカデはだいたいツガイで生きてるから、1匹殺すと、もう1匹が泣きながら、連れを探しにくるんだよ」とロマンチックエピソードのように語ってくれて、私はやっぱり腹が立つのだった。

writing:maiko izumi

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この住宅の完成時の様子はこちら↓
WORKS:【川を感じる有機的な暮らし】 建築士の自邸・高麗川沿いの新築木造一戸建て(埼玉県日高市)

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