【暮らしnote No.02】
writing:maiko izumi
独楽蔵の設計した家に住む生活者目線の気づき
【リビングの大黒柱は、雲梯がわり】
憧れのひとり暮らしは、東京の小さな白いアパートだった。狭くても、寒くても、若いから、へっちゃらだった。雑誌に載ってるカフェを巡ってみたり、ジョギングする俳優を見かけても驚かないコツを身につけたり。酔いを醒ますために、夜風に吹かれて歩いて帰る楽しみも知った。便利で、新しいものがすぐ手に入る、いつでも好きなライブや美術館に行ける。感性のアンテナが研ぎ澄まされるような、キラキラした東京が好きだった。もちろん今でも大好きだ。
【梅雨の玄関ポーチの風景】
そんな私は今なぜか、東京から離れた片田舎に暮らしている。「片田舎」って「両」ではなく、「片」なのだから、ちょっと都会寄りのプチ田舎といったところかと思っていたけれど、あらためて辞書で調べてみると「片」は、人の目に立たないという意味で、人里離れた、不便な村里を指すのだそうだ。結局、田舎ということだろう。
【秋の夕暮れ】
住みはじめた頃は、驚きの連続だった。夜が暗い、というか黒い。どこからか得体の知れない遠吠えが聞こえて、イノシシ駆除のお知らせが回覧板で回ってくる。小学校からの緊急メールは、不審者情報ではなく、猿の目撃情報だった。今までの人生で、出逢ったことのない、ゴムのおもちゃのような赤黒い大ムカデに遭遇した時は、シャイニング級に絶叫し、それにつられて子どもたちも号泣。阿鼻叫喚という四字熟語にふさわしい場面が繰り広げられた。