久しぶりに水戸芸術館に行って思ったこと
2019/6/13
水戸芸術館は、磯崎新さん設計で、完成してから29年経過しています。私自身は、おそらく25年ぶりの訪問です。久しぶりに再会した芸術館は、驚くほど当時の印象そのままでした。管理も隅々まで行き届いており、芝もきっちり刈り込んであります・・・。
管理者によって良くも悪くも変化する建築空間
一般的に、このような不特定多数の人々が利用する施設というものは、管理者による、ちょっとした改修や、看板やサインなどの後付け、利用者による使われ方が変化などによって、当初のカタチや、思想を見失ってしまうケースが多くあります。水戸芸術館もまた、そのひとつではないかという懸念をひそかに抱いていたのですが、それはいい意味で裏切られました。むしろ、ここだけ、時間が止まっているような錯覚を覚えるほど、25年前と変わらぬ空間でした。
水戸芸術館のピロティ部分はモノが整理されて整然としていました
水戸の市街地は、他の地方都市同様に、不景気や人口減少などを抱えて、淋しくなっている印象を受けましたが、水戸芸術館だけは、まったくその変化に動じることなく、威風堂々としています。時間が止まったような錯覚さえ覚えるような、ちょっと不思議な感じがします。それがある意味、建築というよりも、遺跡や墓標のような記念碑的な側面を感じることもありますが、決して人々に忘れられて、元気のなくなった空間ではありませんでした。
水戸芸術館の外壁の石積み
市民が集まる空間として生き続けている水戸芸術館
ギャラリースペースで行われていた無料の市民美術展を少し覗いてみたのですが、作品の多さ、多様性、そして何よりその熱量に圧倒されました。昔から受け継がれた市民の気質もあると思いますが、この施設がありつづけることによって、芸術に触れる、感じる、創る機会が維持されていて、どっしりと水戸の地に根づいています。
ホールのパイプオルガン
約30年前の竣工当時と比べて、時代の空気感もずいぶん変わってきました。建築は、より軽くて、薄くて、透明なもの。建物自体の存在感やディテールをなくすモノが重宝されています。そんな変化をふまえると、水戸芸術館のように、重厚で、主張のある建物というのは、スタイル的にも財政的な面でも、敬遠される存在なのかもしれません。
しかし、たぶん水戸芸術館は、今後も生き続け、時代を超えて受け継がれ、やがて水戸のスタンダードになっていくのかもしれません。
ホールに続く階段
関連コラム:『マチネの終わりに』とステファニー・アルゲリッチ(水戸芸術館にて)
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