入間市の木造新築住宅(平家)は建築設計事務所/独楽蔵へ

【和洋折衷modern & traditional】悠々自適な暮らしを愉しむ木造平屋

埼玉県は入間市の住宅街。かつて区画整理が行われていた地域で、道路がマス目状に整備された、すっきりと気持ちの良い住宅街です。古くから住宅が立ち並んでいる区画の一角に、新たに新築住宅を建てるプロジェクトがはじまりました。

施主はシニア世代のお客さま。長年勤められた企業を退職後も、日々の暮らしを整えつつ、時にはゴルフをされたりと、穏やかなセカンドライフを愉しんでいらっしゃいます。新しい木造の住宅は、ワンフロアで暮らしが完結する平屋建て。外観は寄棟と切妻の屋根を組み合わせ、軒のラインが長く続くオーソドックスなスタイルです。屋根材は、いぶし銀の日本瓦を採用しました。外壁などの材料でアピールするような住宅ではなく、軒の長い屋根が外壁に影を落として、陰影でフォルムを見せる造形になっています。特に和風を意識しているわけでもありませんが、昔から伝承された日本の住宅の長所を生かしながら、和洋折衷の現代の日本スタイルを体現していきました。

「家づくり」の打ち合わせは、まず、今のお住まいを確認することから

新しく住宅を設計する際には、現在お住まいの「家」を見せていただきます。打ち合わせではわからなかったお客さんのバックボーンがわかりますし、デザインの嗜好性や暮らし方、モノの量などが具体的に把握できるからです。また、家具や家電など、新しい家でも使いたいものの寸法を確認することもできます。お客さんも、こちらが第三者として質問することで、暮らしの中で大事だと考えていることやご自分の嗜好性を、再確認することができるようです。設計士と施主とが、お互いに情報をシェアしながら、これからの暮らしをイメージしていくのです。

お客さまは、身のまわりのことをきちんと整理されており、論理的に物事を進めていくのがとても上手な方でした。長年、お仕事や日々の営みのなかで培われてきた、穏やかな品格のようなものを、建物にも反映させていきたいと考えました。年齢的なこともふまえて、生活がコンパクトにまとまる平屋建てになりましたが、同時にご本人の持つ、モダンな日本紳士といったような佇まいが、平屋ならではのすっきりとした姿と、和洋折衷の絶妙なデザインに結びついたのかもしれません。

引戸を開け放つと大きなワンルーム、動線がシンプルで温度差の少ないフラットな空間

平家の良さは、階段や段差がなく、生活の導線がシンプルなこと。それぞれの部屋を隔てる木製建具は、基本的に引戸を採用しています。季節が良くて、暑かったり寒かったりがない季節は、建具は開けっ放しにして、緩やかに繋がるワンルームの感覚で暮らすことが可能です。

風の通り抜ける内部空間。玄関、仏間、キッチン、ダイニング、リビング、書斎スペース、寝室、洗面脱衣室が緩やかに繋がっています。繋がっているということは、空気自体も同じなので、温度差が少なく、高齢になった際に懸念されるヒートショックをなくすことができます。

造り付け神棚の下はTVの収納スペース。その脇は、リビングの一角を利用した書斎スペース。書斎スペースはデスクと、物陰には本棚が置ける仕様になっています。周りの壁はタモ材の縦羽目板張りです。リビングと仏間の間は、明かりを採るために障子が組み込まれた“源氏襖(げんじふすま)”を取り付けました。越前和紙の柔らかな色合いと、障子の光がほどよく調和します。隣に並んだ玄関へ続く引き戸との高さが違うのは、仏間が和の空間なので、源氏襖の高さが1800mmに絞ってあるからです。和と洋の調和を細やかに心がけることで、それぞれの魅力が引き立ちます。

落ち着いた家の条件、玄関ポーチは、明暗のギャップで玄関へ導く室内空間へのイントロ

「よい茶室には、よい露地」、「よい音楽には、よいイントロ」があるように、しっとりと落ち着いた住宅をつくるためには、外部から玄関に繋がるアプローチが重要になります。今回の住宅の玄関は北側道路に面した位置ですが、その道路から直接入らずに、脇の駐車スペースとなってるオープンスペースから、空間の質が変化するイントロを持ってアプローチする方法に計画しました。

アプローチの方向性にも変化を持たすことができますし、明るく開放的な外部から、閉鎖性のある薄暗い空間に入るという明暗のギャップも表現できます。また、玄関の引戸を開けると明るくて天井の高い空間への変化も楽しめます。玄関ポーチの周りはボーダータイルで外壁に変化をもたせました。天井が低くて、薄暗い玄関ポーチは、陰影のコントラストでまとめる。タイルと木製玄関引戸の材料のコントラスト。

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仏間を玄関の脇に配置して客間としても利用する

玄関引戸を開けると、ポーチとは対照的な明るく、天井の高い空間に場面転換します。玄関内部は、漆喰と木材、石を使った自然素材の空間です。極力、人工物や光モノを排除して上品な空間の雰囲気を演出しています。

玄関の正面の引戸を開けるとリビングです。急な来客だったり、リビングを見せたくないときは、脇の引戸から仏間に案内して、客間として利用することも考えました。リビングを経由せずに直接いける導線ですし、キッチンも近いので、すぐにお茶を用意することもできます。普段は、利用頻度の少ない仏間ですが、使い方を重複させることで、稼働頻度の高い空間にすることができます。

玄関の手すりや受けの造作も既製品や金属を使用せず、職人さんに加工してもらった制作物です。玄関框と巾木、タイルの収まり。

漆喰、木材、石、紙、草など、全てが自然素材で作られた内部空間(玄関&仏間)

仏間は四畳半のコンパクトなスペース。リビングを経由せずに玄関から直接アクセスすることができるため、客間として利用する機会も想定しています。また、南側の源氏襖を開くとリビングと一体化して使用することも可能です。ゴロっと横になりたい時や仕事の書類を広げたままにしておいても便利です。

室内仕上げは、聚楽壁(左官)や畳、木材、越前和紙などの自然素材で作られています。機械類や金属類などを極力排除して、流行に左右されない伝統的な日本の空間を作り出しています。仏間正面(北側)座布団を収納するための押し入れと仏壇を置くための板の間スペース。

工事中:仏間の聚楽壁の左官作業の様子は、こちら

キッチンには食器庫があると便利です

建物内の車庫スペースは収納スペースも兼ねて