【暮らしnote No.21】
writing:maiko izumi
埼玉県入間市にアトリエを構える建築設計事務所 独楽蔵 KOMAGURAが設計した新築木造住宅に住む生活者(maiko izumi)から見える日々の暮らし
私にとって日常は、軽やかに前進するというより、ささやかな「行ったり来たり」の積み重ねだ。いくつもの「行ったり来たり」を、いかに大切に、いかに心地よく過ごせるかどうかは、人生の「色合い」を決めていく。我が家の「行ったり来たり」を、おおらかに見守ってくれるもの。それは、玄関ポーチのウッドデッキ。
大きな庇(ひさし)の下にあって、日々の暮らしに寄り添うように、ただ、そこにいる。外から帰ってくると、駐車スペースにクルマを停める。エンジンを切ったクルマは、魔法がとけたカボチャのように、すんと無口になる。山のような荷物を、いったんウッドデッキに置く。
思い出し笑いの日もあれば、鼻歌が合唱になることも。ため息の日もある。家族との会話が止まらない時もあるし、口も聞きたくないような日もある。ウッドデッキは、というと、どんな時も、大きく両手を開くように、私たちを迎え入れてくれる。
腕の中の子どもは、少しずつ重くなり、毎日できることが増えていった。高熱で燃えるような小さな体を、無我夢中で抱きかかえた日もあった。雨の日は、大きな傘となって、私たちを守ってくれる。少し大きくなった子どもたちがギュッと集まって、ゲームをしたり、漫画を回し読みしたりする時、ウッドデッキは、空や風と遊ぶ、開放的なアウトドアリビングになった。
今はみんな、外からそれぞれに帰ってくると、デッキでほこりや花粉を払い、汚れたスパイクや雨具を干す。外でのいろいろなモヤモヤや、絡まった想いをほどく時もあるだろう。愛犬は、デッキの段々のところで、ひなたぼっこをするのが好きだ。季節の変わり目は、鼻先でキャッチする。
外から内へ、内から外へ。行き交う、いくつもの日常。
先日、夫がデッキの綻びをメンテナンスしてくれた。継ぎ足した木材の、そこだけが、やけに真新しい。長い月日を共に過ごしたウッドデッキは、気づかぬうちに、たくさんの思い出が染み込んだ、奥深い色合いになっていた。肩の荷物を下ろしてみたり、風に吹かれたり、流れ星を見つけて歓喜したり。
私たちは今日も、ウッドデッキを「行ったり来たり」しながら、人生に新しい色合いを添えていく。
この住宅の完成時の様子はこちら↓
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