埼玉県東松山市の新築木造デイサービスの設計デザイン

Care(介護)とCulture(文化)が繋がる空間〜東松山の木造新築デイサービス施設〜(前篇・外部空間)

埼玉県のちょうど真ん中に位置する東松山市。かつては城下町、宿場町として栄えた、歴史と品格のある地域です。以前からこの場所で運営されていた高齢者のためのデイサービス施設を移転し、新築の施設を計画するプロジェクトです。施主である医療法人社団「保順会」責任者のTさんには、この施設を作ることへの熱い想いがありました。それは「老人福祉施設」を「+地域+文化」の活動、情報発信の場にしたいということ。その理念を具現化するためにも、地域のコミュニケーションの場としても活用できる空間をご希望されていました。そこで、外と内が緩やかにつながり、あらゆる人々が、それぞれのステージで生き生きと過ごせる、シームレスな空間づくりを計画。何度もディスカッションを重ねてプランを練り上げていきました。

目 次(クリックすると開きます)

生きてる誰もがアーティスト!〜医療・福祉・介護と地域・文化を繋ぐ、新たなデイサービス施設へ〜

新しい施設は、高齢者のためのデイサービス施設ですが、単なる老人福祉施設にとどまらず、「老人福祉」に「+地域+文化」の活動、情報発信の場にしたい。そして、その理念の具現化したカタチとして、地域のコミュニケーションの場となるような空間をめざしていました。

クライアントである「医療法人社団 保順会」の法人理念は【患者さん・ご利用者に寄り添い、医療・福祉/介護・文化をつなぐ】。人が人としてかけがえのない人生を豊かに過ごすためには、Cure(治療)のための医療はもちろんのこと、Care(介護、福祉)のチカラ、プラス自己実現のためのCulture(文化)という3つのCの重要性をかかげていました。今回のプロジェクトでは、そのビジョンを具現化していくために、外観、エクステリア、内部と外部の繋がりの活性化を促す、さまざまな仕掛けを考えていきました。

地域とシームレスに繋がる、有機的なランドマークとして〜これからの介護施設の在り方〜

建設地の東松山市の唐子地区は、田園の中に住宅が点在する、昔ながらの牧歌的な地区です。施設のある大きな幹線道路沿いには、住宅や倉庫、工場などが点在しています。新たに生まれるこの施設が、地域の有機的なランドマークとして、楽しいコミュニティの場になるようにデザインを心がけました。利用者や職員はもちろん、地域の方やアートイベントの参観者など、この施設を利用するさまざまな方たちが、お互いの存在を尊重しあえるような関係性が生まれるように、内外を通して、シームレスで気持ちの良い動線を意識しました。

施設の内部空間はこちら

通りを彩るグリーンベルト〜ガーデンデザイナーの有福創さんと共に〜

敷地北側の道路は幅10mの広い幹線道路で車の交通量も多いですが、広い歩道も整備されていて、近隣の小学校の登下校の道にもなっています。地域の人たちも通る道なので、道沿いに有機的で華やかに彩る、長さ約40mのグリーンスペースを作りました。敷地と道路には800mmの高低差がありますので、草花をちょうど目線に近い位置で感じることができます。今回はガーデンデザイナーの有福創さんに、手入れがしやすく、自然で気持ちの良い風が吹くようなデザインを作っていただきました。

コミュニケーションが生まれる〜辻時計のあるポケットテラス〜

グリーンベルトの中央には、入江状に窪ませたポケットテラスをつくりました。ポケットテラスの大きな窓からは、室内の利用者さんの様子や南庭の草花を見ることができます。逆に室内からは、車や通りを歩く人たち、その向こうの緑地の風景をみることができます。間接的ですが、ゆるやかな交流のスペースです。通りからセットバックした入江状のテラスには、ショーケースと一体となった赤い辻時計をつくりました。「辻」とは、道路が交わる所や人が往来する道筋のこと。木々や花をきっかけに会話が生まれたり、時には下校中の子どもたちが手をふってくれたり。そんな人々が交わる場所になってほしいという願いも込められています。

敷地の北側は水路や800mmの高低差があるため、施設へのアプローチは西側の道路から。段差を解消するための緩やかなスロープのアプローチです。車の送迎で、施設に訪れることが多い利用者さんのために、エントランスには大きな庇を出して。雨や雪の日でも濡れずにアプローチできる通り抜けのデザインになっています。

完成から3ヶ月経過した草花で色とりどりの庭はこちら

回遊できる庭は、老人福祉施設の大切な空間になる〜デッキテラス&バリアフリーの遊歩道〜

デイサービス施設では、食事や入浴などの日常生活上の支援や、生活機能向上のための機能訓練や口腔機能向上サービスなどを日帰りで提供します。通常は室内で行われる機能訓練ですが、今回の計画では、機能訓練の一環として、外部のデッキスペースで寛いだり、庭に出て、木々や草花に触れてもらうこともメニューの一つとして考えました。利用者の皆さんはもちろん、日々活動計画を立てるスタッフの方々にとっても、介護の可能性がひろがるのではと思います。

利用者さんが気軽に室内からデッキスペースにはフラットで移動でき、さらに庭に近い部分に車椅子でも移動可能なバリアフリーの遊歩道を整備。空を見上げ、風を感じ、緑や花の香りを楽しむ。時には土にふれ、鳥や虫の声に耳を澄ませる。そんな風に楽しみながら、機能訓練に結びつくことをめざしています。

完成から3ヶ月経過した草花で色とりどりの庭はこちら

サークル状の遊歩道の中央は芝庭になっています。各種イベントや催物の際には、アウトドアのステージとしても活用できるスペースです。Culture(文化)の発信の場としても、理想的な空間です。

今回の計画では、機能訓練の一環として、室内の空間だけではなく、外部のデッキスペースくつろいでもらったり、庭に出て、木々や草花に触れてもらうことも、活動メニューの一つになればいいと考えています。クライアントやガーデンデザイナーの有福創さんと庭づくりのコンセプトを考えていく中で、利用者さんやスタッフの皆さんが年月をかけて「一緒に作っていく庭」というテーマが生まれました。

writing監修:maiko izumi

このプロジェクトのコンセプトスケッチ

この建築の間取り図(平面図)

WORKS:東松山市の木造新築デイサービス施設(内部空間)

この建物のコンセプトスケッチはこちら

その後の暮らし:【宿根草中心の手間要らずの庭】完成から4ヶ月経過したデイサービスの庭
その後の暮らし:【東松山市:木造新築デイサービス施設「楽らく」】完成から2ヶ月経過

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