埼玉県入間市の新築木造住宅は建築設計事務所/独楽蔵へ

外と内をゆるやかに繋ぐ、自由自在な大人の住み処。〜埼玉県入間市の新築住宅〜

敷地は、入間市の古くからある住宅街。台地の北側端部に位置して、南に向かって緩やかに勾配がついています。元々、建っていた住宅を解体して、ご夫婦のための自在な新築住宅を計画。ご主人の退職後の第2の人生を想定しながら、「家づくり」の打ち合わせを重ねていました。5年前には図面も完成していたのですが、数年間海外赴任されるとことになり、プロジェクトは一旦休止。数年の休止期間を経て、ご夫婦が日本に帰国された昨年末から、あたらめて工事が開始されました。

それぞれにしっかりと自立しながらも、共に過ごす時間も愉しむおふたり。柔軟性のある考え方が、とても印象的でした。好きなことを理論的に調べたり、比較検討したりすることもお好きで、クルマにバイク、オーディオやインテリアに至るまで、その知識は実に豊富です。新しい住まいのプランを計画していく際も、暖炉や素材選びなど、ひとつひとつを深くリサーチするなど、家づくりというものの醍醐味を満喫してくださいました。おふたりのセンスの良さ、遊び心、自由度の高さが、自然と計画プランにも反映され、開放感のあるデッキや包容力のあるオーニングシェード、内と外とのボーダーレスな空間のご提案など、さまざまなアイディアが生まれました。

どんなに世界が変わっても、変わらないもの。暮らしの本質を愉しむ大人の空間。

大きな吹き抜けのあるリビングは、2階のホールや階段と一体に。玄関ポーチの役割を果たすデッキテラスは、間口3間(5460mm)、出幅2500mmの大きなオーニング(電動テント)付き。天気にあわせて、リビングに差し込む直射日光を防ぎます。開放感溢れるデッキテラスの一部分に、リビングにくい込む入り江状のインナーテラスを作りました。外部と内部の中間領域を作ることで、利便性が生まれるだけでなく、ちょっとした遊びの空間になります。内部空間(インドア)と外部空間(アウトドア)の境目を感じることの少ない、自由自在な大人の暮らしが見えてきます。

開放階段と天井の高さが、心地良い。大きな吹き抜けのあるリビング。

この住宅は2階建てですが、リビングの部分は平屋なので、片流れの屋根の形状に合わせてリビングの天井を高くすることができました。高く伸びた吹き抜けは、2階のホールまで届きます。上部の引き分け戸を開け放つと、2階のホール部分とリビングが一体の空間になる構造です。ご夫婦2人なので、階段も半分OPENにして、リビングに取り込みます。外と内、1階と2階、部屋と部屋といった、あらゆる境界性を解き放つことで、より自由な空間を創り出すことができます。リビングに張り出した部分の階段は、存在感を少なくして、シンプルな鉄骨を使いました。

2種類のデッキテラス:外テラス(露天)とインナーテラス(屋根付き)

リビングの南側は、建物の幅いっぱいに陽当たりのよいデッキテラスが広がります。プライベートな空間ながら、ひろがる空とどこまでも繋がるような爽快感を楽しむことできる、まるで毎日がグランピング気分です。奥行きは2500mm、デッキテラスの先端には植樹帯のグリーンベルトを設けています。正面のデッキテラスは、可動式の電動オーニングシェードは、日差しの角度や強さによって屋根の長さを調整することが可能です。

オープンなデッキテラスとは対照的に、リビングに入り江のように深く食い込んだ形態のインナーデッキテラスは、玄関のポーチを併用しています。インナーデッキは建築本体の屋根や3方向を外壁に囲まれたプライバシーのある落ち着いた空間になっています。

薪ストーブはリビングの中心にむけて、誰もが火を囲めるように。

薪ストーブはリビングの南東の角に、45°斜めを向く方向で設置してあります。「火」がある場所は人が集まります。薪ストーブのまわりはいい「溜まり場」になりますので、薪ストーブを設置するのであれば、たくさんの人が火を見ながら集まれるような配慮をするとよいでしょう。ストーブがリビングの中心を向いていれば、火の様子がいつも手にとるようにわかりますし、何より暖かいです。

この家の薪ストーブは、チャールトン&ジェンリック(イギリス)の「CPV5W Classic」。薪ストーブ大国イギリスの世界最先端とも言える環境基準Ecodesign readyを取得した、省エネでハイパフォーマンス。最先端の薪ストーブです。

モノを置かないキッチンのためのパントリー

「キッチンはシンプルにして、モノを置かないようにしたい」というのが、奥さまのご希望でしたので、本来、食器棚や家電のためのカウンターが配置されるべき、背面はシンプルな壁にしました。壁材はタモ材の縦羽目板を一面張ってあります。本来、そこにあるべき、食器棚やカウンターはキッチンの北側にパントリーを作って収納することになりました。こみ箱だけは、キッチンにないと不便なので、背面の壁を一部、ゴミ箱のための収納スペースにしています。(タモ材の両開き扉付き)

よいキッチンは“これ”、という答えはなくて、使う方によってさまざまなのだと思います。今まで使ってきたキッチンで本当に残したいもの、新しく取り入れたいものは何かを整理しながら、食をめぐる諸々の家事が、より楽しく効率的に進められるように、柔軟なプランをご提案できたらと考えています。

パントリーにつながる引き戸は、天井まで伸びる一枚ドア、タモ材を使用しています。システムキッチンの後ろ側にある両開き戸も壁材と同じタモの縦羽目板を使って制作しました。キッチンをスッキリさせるために、中はゴミ箱入れになっています。

我が輩も施主である〜3匹のネコたちも家族です〜

海外の赴任先から一緒に戻ってきたネコたちも、大切な家族です。リビングの天井の一部は、魅力的なキャットウォーク状態に…。キャットタワーからの収まりがちょうどいいようです。3匹いるそうですが、お顔を見せてくれるのは、1匹だけです。ネコは心地良い場所を見つける天才だといいますから、新しい住み処で、たくさんのお気に入りの場所を発見してもらえたらと思います。階段も寛ぎスペースにする自由さが素敵です。

階段でくつろぐネコさん。杉の無垢材の階段が気持ちよさそうです。

3方向(東・西・北)は閉じて、南側をOPENなプライベートスペースに

建物の計画地は、北側に細い道路が面していて、東西の間口が限られた長方形型の敷地です。敷地の南側に車庫がありましたので、道路から車がはいるための通路も必要になってきます。

近隣が隣接した住宅地の中で、建物の間口は敷地の幅いっぱいに計画する必要がありましたので、間取りやプライバシーなどを考慮した結果、外壁の3方向(東・西・北)は、あえて開口部の少ない壁を意識したデザインにしました。屋根の軒も極力、抑え気味に計画しましたので、外壁は耐久性のあるガルバニウム鋼板をメインに使用してあります。建物の南側は、開放的に、東西と北側立面&アプローチは防備で閉じられた外観。

デッキテラスから住宅へのアプローチ。電動オーニング(奥行き2500mm)とデッキテラス。

2階はワンルームのホールで趣味の空間に

階段を登ると、2階はワンルームのホールが広がります。趣味のスペースとして想定していますが、家族や来客の方がお泊まりになる場合を考えて、トイレ、洗面スペース、シャワーブースも設置してあります。

階段を挟んで、南側には1階の大屋根部分にポッカリと穴を開けたように、大きめのバルコニーがついています。手すり状に屋根がせりあがって、廻りからバルコニーの存在がわかりません。空を切り抜いたような形状のバルコニーは、プライバシーのある特別な空間です。洗濯物を干すのにも十分なスペースです。

「源氏襖(げんじふすま)」とは、襖の一部に明かり取り用の障子をはめ込んだものです。しっとりとした墨色の越前和紙の間に、障子がはめ込まれています。やわらかな光が行き交うことで、閉塞感をなくすことができます。

足先に、しあわせな感触〜見た目(視覚)も踏んでも(触覚)気持ちがいい杉の無垢板〜

通常はラワン材やタモの集成材などの堅木を使用する階段の段板ですが、今回は床材に合わせて、杉の無垢板を使用しました。やはり、材料の存在感があります。裸足で踏むと気持ちがいいですし、板の厚みを感じます。一本の杉の丸太を、30mmの厚みで板状にスライスして、約800mmの長さに切った材料です。階段の脇から板の断面を見ると、年輪が繋がっているのがよくわかります。

階段を横から見ると年輪の様子がよくわかります。階段の手すりはタモ材&スチールのフラットバー。タモ材も集成材は使わずに無垢材を使用しました。

この家のイラストコンセプト案:その先の、さらに先。近未来の生活
その後の暮らし:【外と内がゆるやかに繋がる、自由自在な大人の住み処】新築住宅の1年後

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