埼玉県狭山市の古民家リフォーム/リノベーション

品格と寛ぎが調和する古民家リノベーション〜築100年 切り妻平屋の日本家屋を現代住宅にリフォーム〜(埼玉県狭山市)

埼玉西部に位置する、狭山市。古くから狭山茶の生産地として栄え、大通りに面した現在の街並みも、その穏やかな面影を残しています。今回は、その地にお客さまの先代が建てた築約100年古民家のリノベーションです。蔵や納屋、畑が点在する広い敷地のなかで、数年間空き家になっていた母家を、心地良く暮らせるように大改修していきます。既存の家屋は、伝統的な日本家屋の間取り「土間+和室(8畳+8畳)」でしたので、現在の生活に合わせて再構築していきます。建物の骨格だけを残し、新しくリノベーションするためには、まずは足下の基礎部分から。しかし築100年以上の建造物なので、もちろん基礎はありません。そこで、建物の外周に新たにコンクリートの基礎を増設。建物全体を基礎や新しい柱、梁、壁で包むことによって、耐震性・耐久性の向上をめざします。

構造的に、永く住み続けられる古民家へ〜『耐震補強+リノベーション』で古民家を現代の住空間に再構築〜

古民家のリノベーションというのは、その建造物の“築年数”によって、その後の流れも大きく変わります。今回は、約100年前というかなり古い時代の建物なので、もちろん基礎も断熱材も構造壁もありません。そういう場合、まずは間取り以前に、基礎や構造といった根本的な建築要素を再構築し、現在の住空間や現代生活に見合うようにシフトしていきます。

新しい暮らしは、デザイン的な“雰囲気”を整えただけでは成り立ちません。耐震性や居住性、現在の状態をふまえて“古民家らしさ”をどこまで残せるか?といったさまざまな課題を、予算と擦り合わせつつ、お客さまにとってのベストな答えを一緒に探していく過程が必要です。古民家等のリノベーションの際は、特にこのような点をしっかり見極めていくことが大切といえるでしょう。

今回の施主であるご主人は“古民家再生”という課題に向かって冷静に、かつ論理的に進めていける方でした。と同時に、新居で初めての薪ストーブに挑戦したり、趣味のロードバイクの見せる収納を愉しんだり、新しいものへの知的好奇心にも長けていて、まさに理想的なバランス感覚の持ち主。この地で永く息づいてきた古民家に、新しい風を上手に吹き込む。そんなご家族にふさわしく、落ち着いた空間づくりを進めていくことになりました。

まず、建物の外周に新たにコンクリートの基礎を増設し、建物全体を基礎や新しい外壁で覆うことによって、耐震性、耐久性、断熱性を向上させていきます。

今回の大規模改修にあたって、計画前に小屋裏(天井裏)を調査したところ、棟札(むなふだ)を発見しました。棟札というのは、建築物の創建や修理の際に、その詳細を木札などに記して棟や梁に付けた建築記録のことです。屋根の垂木に釘で打ちつけられていた板は、囲炉裏の煙で燻されて真っ黒でしたが、板を取り外すと内側に建物の正確な築造年数が書いてありました。

時を超えて、遙か昔の職人たちの、技や心意気のようなものを受け継いでいく。そんな邂逅が生まれるところにも、古民家リノベーションの醍醐味があります。

現代の心地良い暮らしにシフトするために〜古民家リノベーションは既存の間取りの見直しが大切〜

間取りについては、日本家族の伝統的な「土間+和室(8畳+8畳)の間取り」を現在の生活に合わせて、再構築します。伝統的な日本家屋の間取りの特長は、家の一番居住性のいい場所を、客間や広縁として使い、家屋の“陰”な面を持つ北側には、住人の寝室や水廻りが置かれるということ。客人をもっとも良い空間でもてなすという、日本人ならではの心遣いですが、現代の暮らしにはそぐわないところもあります。リノベーションに当たっては、既存の間取りをリセットし、1番居心地の良い“陽”な空間に、家族が1番集まるリビングを配置していきます。

旧和室の北側に、すっきりと清潔感のあるアイランドキッチンをリフォーム〜新しい風を吹き込む、古民家再生の楽しみ〜

キッチンは旧和室の北側にあった襖や壁を取り除いて、現代的なアイランドキッチンを配置しました。元々あった長押(なげし:日本建築に見られる部材で、和室の装飾的な要素)で、ちょうどレンジフードが隠れるデザインに。北側でも、開口部の広いリビングとシームレスに繋がっているので、明るく気持ちの良い空間になっています。

土壁で土色だった既存の壁は、漆喰を塗り直して白い空間に。部屋もずいぶん明るくなりました。工事中の様子はこちら

漆喰の上塗り作業(工事中)の様子はこちら→

関連記事:【黒光りしている既存の木部、新たな白木。】「新旧 木部の対比」

リビングの真ん中に、暖かな灯を〜リフォーム/リノベーションの古民家に薪ストーブを設置〜

リノベーションの場合、薪ストーブの設置位置は、既存の屋根と煙突の折り合いもあるので、これがリビングの形状にも絡んできます。この古民家の場合は、もともとが立派な瓦屋根だったので、なるべく既存の屋根を痛めないように配慮しました。本屋根を避けて、広縁に新規で設置したガルバニウム鋼板の屋根の部分に、煙突が真っ直ぐ上がるように考えました。

薪ストーブはリビング全体を暖かく、明るく灯すような位置に。また、薪の搬入をしやすいように、開口部に近いこともポイントです。

リビングに設置した薪ストーブは「ハンターストーブ」、イギリスのメーカーのストーブです。シンプルなデザインが、家の雰囲気にとても合っている気がします。

日本でも薪ストーブの活用がひろがり、さまざまな国、デザインの薪ストーブを選ぶことができます。機能性や好みによって、お気に入りのストーブを見つけるのも、家づくりの愉しみのひとつです。

関連記事:【ハンターストーブ ヘラルド8】設置
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大黒柱(ケヤキ)の埋木(うめぎ)

古民家再生は、日本人の体格の変化に合わせてリノベする〜昔の家の寸法(天井高さ)の違いを解消〜

【昔の家を直して使う】(室内の高さの問題について)
昔の家は基本的に和室ですから、部屋は障子や襖で区切られています。尺貫法でつくられていますので、大体高さが決まっています。畳は寸法の取り方によって、京間や江戸間など、サイズが違いますから、建具も全国的に同じがどうか定かではありませんが、この辺りの地方は大体、高さ1760mm。ほとんどが5尺8寸です。昔の日本人は、総じて身長が低かったらしいので、それで問題がありませんでしたが、現代では大問題。180cmを超える人は普通ですから。新しく家を造る場合も、ドアや開口部は、やはり2mが基本です。

今回は、古民家ならではのよさを生かし、天井近くの欄間や長押を残し、逆に床を下げることで、天井高をキープすることにしました。
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大屋根の瓦は、一部、交換、補修を施してそのまま使います。元々、カラー鉄板葺きだった下屋(広縁&ポーチ部分)は、新しくガルバニウム鋼板で葺き直しました。

10畳の玄関でおおらかに、上質に〜古民家の雰囲気を残す玄関土間〜

約10畳の土間空間は、そのままの間取りで、現代的な土間玄関に。幅広の玄関ガラス戸と大きなFIXガラスで、外側に開いたパブリックスペースになりました。

昔の家は、玄関土間と座敷の段差が500mm程度ありました。古民家の雰囲気を残しつつ、現代的なユニバーサルデザインにシフトするために、式台を設置。スムーズな出入りが可能です。

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美しい千本格子の建具は、残すことに。木本来の美しさを最大限に引き出す、職人の技を感じることができます。

【昔から使っていた千本格子の建具をリメイクして使う】はこちら→

古民家とルイスポールセンPH5の親和性〜ダイニングテーブルのペンダントライトのデザイン〜

築100年という重厚な空間に負けないように、ダイニングテーブルのペンダントライトも約60年の歴史を誇るクラシックのスタンダード、ルイスポールセンのPH5をセレクト。色は2018年から加わった新色、ブルーグラデーションです。ライトが点灯しているときも、明かりがついていない時も絵になります。漆喰の白と古材のダークブラウンの空間にも、よく似合います。

時や国境を越えて、良いデザインがとけ合う瞬間は、美しい風景にも似ています。インテリアのセレクトは、ご自分の好きな色やデザイン、世界観などを見つめ直す、愉しく愛おしい作業になるのではないでしょうか。

現代の暮らしに馴染む、モダンな和室〜古民家リノベーション・上座の和室を残して仏間&客間に〜

上座だった8畳の和室の間取りは、床の間や押入はそのまま残して、押入の上部に神棚と、北側の壁(南向き)を掘り込んで、仏壇置き場を新しくつくりました。この家で唯一、残した畳の間です。和室兼仏間として新しく生まれ変わりました。

和室の床柱には、床を下げた埋木(たるき)の痕跡が残ります。それもまた、古民家の味です。

改修前の建物の様子

外壁 リノベーションの様子 コチラ→

その後の暮らし:築100年の古民家リノベーション(竣工後1年半)狭山市
その後の暮らし:築100年の古民家:リノベーション後の家族の食卓(竣工後半年経過)
その後の暮らし:築100年の古民家を改造した住宅に、薪ストーブの取扱説明に・・・(引っ越し後、約3ヶ月)

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関連リンク(クリックすると開きます)

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